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□『ふたりで』
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真夜中の海岸。
防波堤に二人で並んで座る。
「ふふっ。買っちゃった。」
ほらっ、と智に足元を見せる。
「え?あっ……これってさぁ。」
「うん、ギョサン。くすっ。売場にね、『嵐◆大野くんも愛用中』って書いてあったよ。」
「ふふっ。あれ?でも、こんなの、履くっけ?」
頭を傾げながら、智は私の足元を眺める。
「なーんかね、智といるとお洒落なヒールやパンプスよりも、夏はこれかなぁって。」
「そっか。…うん。色、可愛いね。ほら、なんていうの?爪の色とも合ってるし。」
紫がかった濃いブルーのギョサンに合わせて塗ったラメ入りのブルーのペディキュア。
「ギョサンね、アンクレット着けてもゴテゴテしないし、履きやすいね。」
「そぉでしょ?……あーでも、なんか、お洒落な色が増えた気がするけどぉ。」
私の足に自分の足を並べ、「オイラも買い換えようかなぁ」なんて呟きながらギョサンを見比べる智。
「智が広めたから、女の子向けにラメ入りやカラフルなのが増えたって釣具屋のおじさんが言ってたよ。」
「ふふふっ。オイラ、カリスマだ。」
「えー、ゴーヤTシャツ着てる人がカリスマなの?」
私の言葉に、あはははと笑う。
「あーぁ、釣り、行きたいなぁ。」
「もう少しの我慢だよ。ね、また私も誘ってよ。」
「もちろん。船長がね、あの子は筋がいいって褒めてたよ。」
「ホント?あー、でも、エサ付けるの苦手だからなぁ。」
「それは大丈夫。オイラ、やってあげっから。」
ちょっと得意気な笑顔を向けられる。
「私ね、釣りなんて自分は一生縁の無いものって思ってたの。でもね、智と一緒に船に乗せてもらって、あ!楽しい!って。」
「ね、釣りもさ、釣具屋も、美術館も画材屋も、いっぱい一緒に行こうよ。オイラもさ、一人も楽しいけど、二人も楽しいなぁって。」
「画材屋さんは行ったことないなぁ。」
「ふふっ。結構、楽しいよ?」
「そう?じゃあ、楽しみにしとくね。」
「うん。まだまだまだ、ずーっと忙しいんだけどさぁ、一緒にさ、いろんなとこ行こうよね。」
「うん。」
真夜中の海岸。
防波堤に二人で並んで
二人で笑った。
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