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□『キミを呼ぶ~黄~』
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「にっのみー。」

ピコピコとテレビゲームをする和也が振り返る。

「何よ、そのふざけた呼び方…。」

「くすっ。何でもなーい。」

「あ、そう?」

さらりと言ってまたゲーム画面へ視線を戻す。

しばらくして…

「二宮さんっ。」

「はい。何?」

キッチリ返事をして和也が振り返る。

「くすっ。今度は名字で呼んでみたの。」

「…そりゃどうも。っつうか、にのみーだって8割名字でしょ。」

呆れたように少し笑って、またゲーム画面へ。

一緒に買い物行ったり
映画行ったり、ドライブしたり
そんなことは出来なくても、

名前を呼べば、すぐに穏やかな顔で振り返ってくれる。

「カズ。」

「だから何よ?今度は普通に呼んでみたってヤツ?」

ちょっと飽きたような顔で和也が振り返る。

その顔が…

「大好きよ。」

「はっ?」

キョトン顔の和也の隣に移動する。

少し伸びたやわらかな髪
夏でも白い肌
振り返る優しい瞳

その全部が大好きだから

「大好きよ。」

もう一度言ってみる。

「……うん。知ってる。」

チラリと私をを見て、またゲーム画面へ視線を戻す。

そして一言。

「俺もアンタ大好きよ。」

って言うから、

「……うん。知ってる。」

そう言っといた。


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