本棚U

□『キミを呼ぶ~紫~』
1ページ/1ページ


「まっつーん。」

一歩前を歩く潤が振り返る。

「ぶっ。何?なんだよその呼び方。」

「くすっ。何でもなーい。」

「お前さ、酔ってんの?」

ブツブツ言いながらまた歩き始める。

しばらく歩いて…

「Jっ。」

「何?」

潤が振り返る。

「くすっ。今度はニノさん考案呼びしてみたの。」

「…そりゃどうも。」

呆れたように笑って、また歩き始める。

腕を組んだり
手を繋いだり
並んで歩いたり…
そんなことは出来ないけど、

名前を呼べば、すぐに優しい顔で振り返ってくれる。

「潤っ。」

「だから何?今度は普通に呼んでみたってヤツ?」

少し伸びた黒い髪
最近鍛えたって言ってた広い背中
すらっと長い手足

そして
振り返る強くて優しい瞳。

その全部が…

「大好きよ。」

「はぁ?」

ちょっと固まった潤の横を擦り抜け…ようとした手をパッと捕まれる。

「俺も大好きだけど?」

「っ…。」

今度は私が固まってしまう。

「まだまだだねぇ。」

悪戯っぽく笑う潤は、やっぱり
まだまだ一枚上手。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ