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□『貴方の為に出来る事…』
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あなたの好きなトコロを書き留める。
あなたの素敵なトコロを書き留める。
いつも使っている皮の手帳。
「馴染んでくるのがわかるからさ、いい色になったら見せてよ。」
なんて、付き合って最初の誕生日に翔が私にくれたもの。
「何書いてるの?」
「んー。見たい?」
「見せてくれるんだ?」
「いいよ。」
私の手帳を手にし、そのページをじっと見る翔。
「誉めても何も出ねーよ?」
「くすっ。うん。わかってるから。」
「っていうか、何のつもり?」
「翔のこと、諦める為に書いてるの。」
「…………わりぃ、理解できないんだけど。」
そう、言うと思った。
だから私は、用意していた言葉を台詞のように言う。
「櫻井翔の彼女は、もっとちゃんとした人がいいよ。」
「…ちゃんとした人って、何?」
「賢くて、綺麗な人…?」
執事服を着た翔に並ぶ、綺麗な人を思い浮かべる。
「……。」
何も言わず帰っていった翔の目が、酷く哀しいものだったことに私は気付かなかった。
何でも出来てしまう完璧な翔。
私が翔にしてあげられることなんて、何もない…。
そう…思ってた…。
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