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□『繋いだ手』
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「ねぇ?」
「はい…。」
「何やってんの?」
「えっと………女子会?」
「語尾をあげるな。俺に聞くな。」
「まつもっさん、こーわーいー。」
「置いて帰られたい?」
ちょっと茶化してみたけど逆効果。
腕組をして仁王立ちの潤が座っている私を見下ろしている。
「ごめんなさい。ちょっと飲み過ぎちゃったからさ、ここで酔いを冷まそうかと思って…。」
「そしたら寝ちゃったって?」
「はい…。」
「ったく、そんなにアルコール強くないんだからさ、考えて飲めって言ってんだろ?」
「はい、ごめんなさい。」
「まぁまぁ、反省してるんだしさ、許してあげなよ。うちの店なら安全だし、最悪、松本クンにも連絡してあげれるから来たんでしょ?」
マスターの助け船に、コクコクと首を縦に振る。
「その"最悪"の事態なんだけど。」
ブツブツ言いながら、潤はお会計を済ましてくれる。
「またおいでね。」
「うん。」
そう言った私の頭をグッと押し、
「ご迷惑お掛けしましただろ?この酔っぱらい。」
頭を下げ、苦笑いのマスターに手を振り店を出る。
「車まで歩ける?」
「あ…うん。」
潤のお説教ですっかり酔いも覚めていた。
「ホントにごめんね?仕事大丈夫だったの?」
「……。」
少し前を歩く潤は何も言わない。
「酔い覚まそうと思ったのと、…潤がね、あの店にいないかなって、ちょっと期待してたの。忙しくて全然会えないから…。あ、でも、迷惑掛けるつもりはなかったのよ?っていっても迷惑掛けちゃってるけど…。」
「何それ。……まぁ、いいや。俺も逢いたかったし。」
ふと差し出された右手を見つめる。
「え?」
「ほら、手、繋いどけよ。転ばれでもしたらさ、それこそ"最悪"。」
「…うん。」
ぎゅっとその手に捕まれば、
「勢いつけすぎ。」
フッと口の端だけで優しく笑う。
「潤、ごめんね。」
「もう、いいよ。怒っちゃねーからさ。」
「ホント?」
「ホント。あ、でも、しばらく飲み会禁止。俺以外と飲むの禁止。」
「はい、了解です。」
満足そうな潤の横顔はやっぱりすごく格好良くって、
思わず繋いだ手を握り直した。
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『ほら、手、繋いどけよ。』
〜「確かに恋だった」サマより〜