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□『キミにキス』
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『ホントごめん。一人で大丈夫?』

「あのなぁ。子供じゃないんだしっ。まったく。」

『くすっ。子供より何も出来そうにないんだけど。』

反論する言葉もないまま、出番の少なかった鍵を取り出し部屋のドアを開ける。

急な残業で遅くなるらしく、めずらしく俺が待ち惚け。

とりあえず窓を開け、何か飲み物でも貰おうかな…

「ん?」

これ、飲んでいいんだっけ?グラスどこだっけ?

♪〜♪〜

『あ、翔、言い忘れてたけど、冷蔵庫の飲み物飲んでいいからね。グラスはわかる?あと、お腹すいたら冷凍庫に何かあると思うから。』

「あーぁ、やっぱり子供以下だな。」

『くすっ。頑張って早く帰るから。』

「へいへい。お利口にして待ってます。」

すべてお見通しな電話に苦笑しながら、アイスティーをグラスに注ぐ。

さて、何して待とうかな。

ふと見ると、ローテーブルの上には女性ファション誌。

「可愛いモデルが着るから何でも素敵に見えるのよ。」

なんていつもクールに言ってるのにめずらしい…そう思いながら手に取ると、折り目のついたページがあるのに気が付く。

ページを捲ると…

「あっ……。」

やっぱり、女の子なんだなぁ。このページを読んでいるキミを思い、クスリと笑みが漏れる。

早く…帰って来ればいいのに。


しばらくして、

「ただいまー。ごめんごめん〜。」

ガチャリとドアが開き、パタパタとスリッパの音が聞こえた。

「やっと帰れたぁ。翔、大丈夫だった?」

「ったく、どんたけ子供扱いだよ。ちゃんとお利口に待ってたよ。」

笑顔のキミをふわりと抱き締め
そっとキスをする。

「…どうした…の?」

驚くキミに、テーブルの上の雑誌を指差す。

「っ!…もしかして…見ちゃった?」

「はい、見ちゃった。じっくり。」

「あっ、あれはね、あれはそのっ…。」

俺の腕を解き、あぁでもない、こうでもないと言い訳をはじめる。

「あんなの読まなくっても、いつだって俺はそう思ってるんだけど?」

キミの華奢な腕を捕まえ、もう一度キスをした。

テーブルに広げられた雑誌のページは…


《秋色モテメイク決定版☆カレも夢中!!キスしたくなる唇!》


そんな事しなくたって…

俺はいつもキスしたい。


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