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□『おしゃべりなキス』
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面倒なコトは、本当に嫌いで
面倒なコトに巻き込まれる以上に
人を巻き込むコトを
極端に嫌っていた。
人を巻き込むくらいなら
一人でいい。
…なんて
昔からずっとそう思ってる…はず。
「俺に関わるとさ、ろくなことになんないよ?」
こっちなんて一切見ずに
ゲーム画面を見たまま呟く。
「それ、聞き飽きてるから。ろくなことないって言うけどさ、私、被害被ったことなんて一度もないわよ?」
「それはアナタがたまたま運がいいだけ。」
「じゃあ、私って、ずーっと運がいいのね。」
「そろそろ幸運も切れるんじゃない?だからさ」
「あーっ、もう。うっさいわね。」
ゲーム画面の前に立つ。
「あ、え?ちょっと、今せっかく’’はぐれメタル’’が。」
「’’はぐれメタル’’より大事なこと!」
「は、はい。……ふふっ。」
ちょっと笑って、
カズがコントローラーを置く。
「面倒な事に巻き込まれるなんて、痛くも痒くもないんだからね?そのくらいの覚悟持ってなきゃさ、カズのこと好きなんて言えないよ。」
「………オトコマエだな。」
「だからさ、もう、言わないで。」
「…はい。わかりました。………今までもさ、これからもさ、ずっとありがとね。」
照れたようにそう言ったカズが
ちょいちょいっと手招きをする。
「どいて?はぐれメタル倒すから。」
「…………あっそ。」
愛の告白よりも
はぐれメタルの方が大事なのね。
でも、それもカズらしい。
そのままピコピコやってる隣に座る。
「…はぐれメタルって可愛いのね。」
「あなた、キングスライム似だけどね。」
「ちょっと、どういう意味よ。」
ムッとして横を向けば…
「俺にとっての癒し系。」
なんて言いながら唇が重なる。
「っ…。キスしながら喋らないでよ。」
「あなたもね。」
照れ隠しの
おしゃべりなキス…。
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