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□『好きになる人』
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初めて会った時
太陽みたいな人だと思った。

よく笑ってよく喋って
気遣いができて
でもちょっと抜けてて
みんなに好かれる人だと思った。
そして、
絶対に好きになる人だと思った。

あれから
何年経ったのかな。
トップアイドルになった今も
あなたは変わらなくて…。
あなたに恋する私も変わらなくて…。

「最近付き合い悪くない?仕事忙しいの?」

「ふふっ。相葉くん相手に’’仕事が忙しい’’なんて言えないよ。」

「……サーフィンもさ、やめちゃったの?」

「ほら、もうアラサーがやる趣味じゃないでしょ。」

「………アウトドア全般、やめちゃったじゃん。」

「………。」

「聞いたよ?もう普通の飲み会やご飯会にしか来ないって。」

「そうかな…。」

「彼氏、とか………?」

「…まさか。それはないよ。」

「そっか、じゃあさ、チャイム押していい?」

「え?」

その瞬間、チャイムが鳴る。
慌てて見たインターフォンには
スマホを耳に当てた優しい笑顔。

「ずっと待ってんのにさ、来ないから来た。」

「え?ちょっと、相葉くん?」

玄関の鍵を開けると

「お邪魔します。」

って……。

「…………何でさ、全部やめちゃったの?何でさ、俺が行くと来ないの?……何でさ、’’相葉くん’’になったの?」

玄関に立ったまま
スマホを耳に当てたまま

時間が止まる…。

「ふふっ。スマホ越しの声は聞き飽きたね。」

「え?あ、うん…」

慌ててスマホを切る。

「ここ、玄関だし…上がる?」

そう聞いた私に、首を横に振り

「さっきの質問の答え聞いてからにする。」

と…。

「………わかった。もう観念します。…あなたを好きになったから、アウトドアはやめた。好きになったから…あなたが行くと行くのをやめた。好きになったから、相葉くんって呼ぶことにした。それだけ。」

「………何それ。何かおかしくない?」

「トップアイドルに本気で恋するなんて、アラサーには厳しい…というか、イタいもんね。」

「………じゃあさ、相葉雅紀に恋してよ。それなら、いいよね?」

「え?」

「相葉雅紀を、好きになってよ。逢いたいって思って行くのにさ、いっつも来ないし。逢って話したい。………ちゃんとさ、顔見て好きだって言いたい。」

「あ、相葉…くん?」

「君が好きです。初めて会った日から、君の笑顔が好き。君が呼ぶ’’まー’’って呼び方が好き。…俺を、好きになってくれませんか?」

目の前の相葉くんが
いつもの優しい顔で私を見ている。

「………っ……’まー’のこと…初めて会った時から…好きになりそうで…ダメだって思って……。」

「…うん。ふふっ。ヒトメボレだね。二人とも。」

ふわりと包み込むように抱きしめられる。

「……’まー’に、逢いたかった…。」

「うん。俺も、逢いたかった。」




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