本棚V
□『片想いの連鎖~j.m~』
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「え?」
入荷したばかりのパーカーを手に、松本さんがビックリした顔で振り返る。
「だから、相葉さんがなっちゃんといらっしゃいましたよって。なっちゃん、偶然うちの系列のショップの常連さんで、私もすぐ仲良くなっちゃいました。」
そう笑顔で言った私に
「………お前、バカなの?」
冷たく言われた一言が、
胸を突き刺す。
「ふふっ。ひどいなぁ。まぁ、バカですけど。」
営業スマイルは得意。
だから…きっとうまく笑えてるはず。
「……あー……ごめん。マジでごめん!これだからだめなんだよな。」
慌て出す松本さんに笑ってしまう。
「松本さんの言いたいこと、わかります。……相葉さん、すごく楽しそうだったんです。なっちゃんと洋服選んでる時とか、見たことない表情で…。」
「……。」
「素の相葉さんに戻せるのは、なっちゃんなんだなぁって。……私には、無理だなって。」
「……そっか。」
松本さんは、何事もなかったように服を選び出す。
そして、ふと手を止めた。
「やっぱ、やめた。他に欲しいもの見付かったから。」
「え?はぁ。何か気になりました?」
お店の中を見渡す。
「俺、冬が欲しい。」
「………え?」
「俺さ、冬が相葉さんのこと諦めるの待ってたから。」
「……………。」
「ホントに。」
私をじっと見つめる松本さん。
「……まつ毛、ホントに長いですよね。」
「……ぷっ。なんだそれ。」
「あっ!ごめんなさい!いや、ほら、なんか、ね?」
突然の告白に動揺してしまい、思わずわけのわからない感想を…
「あはははは。ったく。でもさ、そういうところも好きなんだよな。」
ふわりと抱き締められる。
「ね、冬。今日からはさ、俺のこと見てよ。」
「…………いいん…ですか?」
「俺はさ、ずっとずっと冬がよかったし、冬がいい。」
優しい笑顔を向けてくれる松本さんに、私も自然と笑顔になる。
そして
恋が
動き出す…。
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