本棚V

□『今年も…』
1ページ/5ページ

『s.o』


「ねぇ、聞いてる?」

「……」

「智くーん」

「……」

「こら!大野智!聞いてんの?」

「へ?」

間の抜けた返事をして、キョトン顔で振り向く智に思わず笑ってしまう。

「青、付いてる。」

「え?」

「ふふっ。絵の具、付いてるよ?」

マンガみたいに頬についた青い絵の具。

「今拭いてもまた付くから、後でまとめてシャワーで流すよ。」

「うん。」

「あ、で、さっきおいら呼んだ?」

「呼んだ。ラーメン、作ろうか?」

「え?もうそんな時間?」

「そんな時間。」

「あー…じゃあ、作って。」

「了解。」

智と同じような
ゆっくりした穏やかな時間が流れる。

「あ!ねぇ!」

「ん?」

絵筆を持ったまま、
キッチンにやって来た智がフフッと笑う。

「?」

「言うの忘れてた。」

「何を?」

「今年もよろしくね。」

優しい笑顔と一緒に、
ふわり唇が重なった。

「…うん。よろしくね。」

今年もあなたが大好き。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ