本棚V

□『空』
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空は続いてる

空は繋がってる

あなたはよくそう言うけど

私とあなたの距離は……離れてばかり

空は続いてるけど

空は繋がってるけど

あなたに見える空は……

私には、遠いよ…




「おかえり。と、お邪魔してまーす」

「潤…どうしたの…?」

「どうもしないけどさ…来ちゃマズかった?」

残業でフラフラになりながら帰った部屋には

コーヒー片手に雑誌を読む潤の姿。

「………仕事、忙しいんじゃないの?」

「今、俺けっこう時間あるんだよね。ってか、メシ、食った?」

「ううん。なんか食欲なくて……」

「野菜スープ作ってるけど、食べれそう?」

「…食べようかな。」

「じゃあさ、着替えてきなよ。用意しといてやるから。」

優しい顔の潤。
私は、ちゃんと笑えてる?

部屋着に着替え、リビングに戻ると
美味しそうな香りがした。

私が疲れてるときは、
いつも察して私の好きな野菜スープを作ってくれる。

「何、どした?マジで大丈夫?」

「あ、うん。ありがと。」

「どーぞ。もう遅いからさ、少しにしてるよ。」

そんな、優しい顔で
優しい声で言わないでよ……

「…………。」

涙が零れそうになり
言葉が出てこなくなる……

「…何かさ、あるんだろ?」

「…………。」

「……泣かせてるの、俺なんだろ?」

溜め息をつくように
ふっと笑う潤。

「…優しくしなくて、いいから…」

「何で?」

「……私は、潤と一緒には歩けないから…。潤は…遠いよ…。」

パタパタと涙が落ちてゆく

「俺にもさ、今のお前は遠いよ。」

「っ…………。」

「どうして一緒に歩けない?どうして俺が遠い?ちゃんと話してくれなきゃ、俺にはわかんないよ。……だからさ、ほら、それ食って、ちゃんと話して?」

「……潤…。」

「シケタ顔してんじゃないの。な?」

優しい笑顔につられ『うん』と頷く。




空は続いてる

空は繋がってる

心の底に不安を抱えていれば

優しくドアを叩いてくれて

優しい笑顔で包んでくれる

あなたがいて……

空は続いている

空は繋がってる

心はいつも…そばにいる……


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