本棚V
□『淋しい気持ち』
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「ねー。」
「んー?」
「私のコト見えてる?」
「へっ?何、あなた幽体離脱の特技でもあんの?」
「あるわけないでしょ。」
「じゃぁ、何?」
「だってずっと無視されてるんだもん。」
「そう?」
……
「もーっっ!帰るっっ!!」
「うわっ、ビックリした。急に大声ださないでよ~。」
なんて言いながらも
ずっとコントローラーを持ったまま
ゲーム画面に釘付けのカズ。
わかってるよ。
これがカズのストレス解消ってことくらい。
それを許せないようじゃ
カズとは付き合っていけないってことくらい。
「……全部わかってるけど……
やっぱり淋しいよ。」
バッグをギュッと握り、
まだピコピコやってるカズの背中に
言葉を落とし、リビングを後にする。
玄関に向かっても
靴を履いても
ドアを開けても
カズは追い掛けて来ない…
「っ……。」
なんてコト言っちゃったんだろう。
エレベーターの前で涙がボロボロと零れ出す。
「泣くなら言わなきゃいいでしょ。
って、あ、泣かせたの俺だね。」
声と同時に手を引かれ、
またカズの部屋に…。
「はい、もう泣かないの。俺が悪かったから。ね?ごめん。」
カズは私の視線に合わせ、頭を下げる。
「…………」
「ちゃんと見えてんのよ?でもさ、ほら、なんか久々に会ったからさ。…わかるでしょ?察してよ。」
「…………ふふっ。」
「よかった、笑ってくれて。ってかさ、俺、居てくれるだけでいいのよ。あなたの気配感じながらゲームするの、楽しいんだよね。振り向いたらさ、いっつも笑ってくれてるし。」
「……それなら…時々は振り向いてね」
「うん。ごめんね。と、ありがと。」
ふわりとカズの香りに包まれる。
それだけで
淋しい気持ちはスッと消えてく…
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