本棚V
□『いちばん』
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「あ、『自信がある男』。」
「…お前バカにしてんだろ?」
「まさか。ちょっと笑っただけ。」
「バカにしてるやん。」
「ふふっ。してないよー。それにね、事実、翔は自信持っていい男なんだし。」
口いっぱいにパスタを詰め込んだ翔が、じっと私を見ている。
「…………そう?」
「……その食べ方以外は自信持っていいと思う……。」
「……………。」
手で口元を隠しながら翔はモグモグと口を動かす。
「何でかなぁ。謎だわぁ。どうして直らなかったかなぁ。」
「何がよ?」
「その食べ方。」
「もったいないじゃん、時間。」
「……まぁ、忙しいからね、嵐って。」
「だろ?」
休みなくフォークを動かす翔を
ついついじっと見てしまう。
「これぐらいは、いいのかもね。」
「?」
「嵐でキャスターでイケメンで頭よくって…良いところばっかりだからさ、食べ方がヒドイとか私服がダサいとか、とんでもない不器用だとか、絵が果てしなく下手くそとかマイナス面があって、丁度いいのかもね。」
「ただの悪口じゃねーかよ!」
「あはははは。」
「ったく。お前はほんっとに。」
そう言って、翔はフォークを置き、
水をゴクリと飲む。
「ホントに……なぁに?」
「ほんっとに……お前は俺を一番わかってるよな。だからさ、俺はお前といると一番落ち着くよ。」
ふふっと優しく笑って、
翔が立ち上がった。
「…翔」
「あ、ごちそうさま。じゃ、働いてきまーす。」
「………うん。いってらっしゃい。」
靴を履く翔を見送る。
「ん?何、その顔。」
「だって…。」
「お前さ、俺のこと一番わかってんだから。察しろよな。」
パッと捕まれた腕を引き寄せられ、
唇が重なる…
「察した?」
照れたように笑って、翔は出掛けて行った。
「………察した…。」
その感触が残る唇に
そっと触れてみる………
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