本棚V

□『そういうこと。』
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好きなタイプは
『放っといてくれる人』…。

『会いたい』
なんて言ったら、そこで終了。

そう思って、
ずっと"友達"のふりをしていた。

ニノと同じ
ゲームと楽器と
嵐とお笑いが好きな"友達"。

『明日休みなんだけど来る?』

なんて、時々送られてくる
LINEのメッセージが
私の生命線みたいなもの。

「どーせ何にもないんでしょ?」

「当たり。どーせ、何か持ってきてくれたんでしょ?」

ふふっと柔らかく笑って、
ゴソゴソと買い物袋を覗くニノ。

それだけで幸せだと…。

「あれ、これ何?」

「キッチンの洗剤、もうなくなる頃でしょ?」

「あはははは。すげぇーね、俺すら把握できてないのに。」

「洗剤ないからコップ使わないとか言いそうだからね、ニノは。」

「よくわかってらっしゃる。じゃあ、これ、あなたにあげる。」

ニノが差し出したのは白い箱。

「何、それ…?」

「気味悪そうにするならあげない。」

「え?ちょっとまってよ!いるいる!欲しいですっ。」

引っ込めたニノの手から箱を取る。
中には可愛い黄色のマグカップ。

「日頃の感謝を込めて……ってやつ。」

「ニノから物貰うの怖いんだけど。」

「げっ。」

「ふふっ。ウソウソ。ありがと。大事に使うね。」

「それ、ここで使うカップだから。」

「え?」

「俺さ、あなたいないと何にも出来ないって気付いちゃったんだよね。ほら、俺より俺の部屋のこと知ってるし、俺のこともさ、一番知ってくれてるし。」

「……それって……。」

「そういうこと。」

それだけ言って
ニノはゲーム機のスイッチを入れた。

真っ赤になったニノの耳を見ながら

「そういうことね。」

私の耳も、きっと真っ赤だな。

.

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