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□『曇りのち晴れ』
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目の前で手際よく料理をする潤を見つめる。
「何、目指してるの?」
「はぁ?」
「かっこいいし、優しいし、紳士だし、嵐だし、料理できるし…。」
潤の良いところ…潤の好きなところを指折りか数えていく。
「……やっぱり、潤は高嶺の花なのね。」
思わずテーブルに頬杖をついた。
「高嶺の花ってさ、男にも使うの?」
「だって、それが一番しっくりくるもん。」
「じゃあさ、お前、俺の事諦めるワケ?」
出来立てのパスタを運びながら、潤がちらりと私を見る。
そう、私はもう2度も潤に振られている。
一度目は、
『忙しいから彼女どころじゃない。』
二度目は
…『友達なんだし、そんなことどうでもいいじゃん。』と、告白自体をスルー。
「諦めて欲しいんでしょ?」
「さぁ、どうだろな。ほら、食いなよ。今日も自信作。」
こうやって、肝心なことを言わない潤に、私だけがどんどん深みにハマっている。
「………っていうかさ、俺の事諦めるワケ?って、随分な言い方よね?私が諦めきれないのわかって言ってるとしか思えない。」
パスタを半分食べ終えた頃、ふとそんなことを思う。
「今それ言う?時差だな。時差。」
「最近思うんだけどね。」
「何、今度は急だな。」
「やっぱり、潤は高嶺の花なのよ。私には手が届きそうにないわ。」
「…。」
「もうね、やめます。潤の事好きでいるの。だから、もうここにも来ない。」
できるだけ明るく、涙だけはカケラも見せないように伝える。
「……随分勝手なこと言うじゃん。」
潤がゴクリとレモン水を飲み干す。
「だって…。」
「手ぇ届かないとか、好きでいるのやめるとか、もう来ないとか、全然意味わかんないし。」
「潤…。」
「じゃあさ、俺の気持ちはどうなるんだよ?彼女なら、喧嘩して別れたらそれきりだけど、友達なら、ずっと一緒に居れると思ってた俺の気持ちは無視かよ?」
「……そんなこと言ったら…期待しちゃうよ…」
潤が、大きく深呼吸をして息を整える。
「好きだから。友達でも彼女でもそんなのどうでもいい。お前がいたらさ、俺、笑って幸せに過ごせるから。だからさ、やめるとか言うなよ。」
「………もう、ホントに、諦めようかと思ったんだからね…。」
涙が、ポロポロと溢れる。
潤は立ち上がり、私の涙をそっと拭う。
「もっとさ、早く言ってやればよかったな。」
そして、
優しくキスをした……。
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