本棚T

□『雨上がりの朝、キミと』
1ページ/1ページ


雨上がりのまだ少し薄暗い道を、
智と並んで歩く。

私の話に、時々「へー」とか「そうなんだ」とか相槌を打ったり、「ふふっ」と笑ったり…。

「ねぇ。」

「ん?」

「あのさ、…俺といて楽しい?」

智から思わぬ質問。

「どうしたの?急に…」

「あ〜、ほらさ、俺、あんまり喋んないし、あんま逢えないし、…こんな時間じゃなきゃさ、並んで歩けないし。」

ポツリポツリと呟く智。

「智じゃなきゃ、私のお喋りに付き合ってもらえないし、あんまり逢えないから、少しの時間でも逢えたら嬉しいし。…くすっ。こんな時間に、外歩くこともないもん。私ね、智じゃなきゃ駄目なことばっかりよ?」

「………そっか、なら、いいや。」

少し照れたように笑って、智がすっと左手を差し出す。

「え?」

戸惑う私の右手をギュッと握り、

「…こんな時間だからさ、手も繋げるでしょ。」

なんて。

「うん。」

私もギュッとその手を握り返す。


雨上がりの朝、キミと

手を繋ぐ……。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ