本棚T
□『雨上がりの朝、キミと』
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雨上がりのまだ少し薄暗い道を、
智と並んで歩く。
私の話に、時々「へー」とか「そうなんだ」とか相槌を打ったり、「ふふっ」と笑ったり…。
「ねぇ。」
「ん?」
「あのさ、…俺といて楽しい?」
智から思わぬ質問。
「どうしたの?急に…」
「あ〜、ほらさ、俺、あんまり喋んないし、あんま逢えないし、…こんな時間じゃなきゃさ、並んで歩けないし。」
ポツリポツリと呟く智。
「智じゃなきゃ、私のお喋りに付き合ってもらえないし、あんまり逢えないから、少しの時間でも逢えたら嬉しいし。…くすっ。こんな時間に、外歩くこともないもん。私ね、智じゃなきゃ駄目なことばっかりよ?」
「………そっか、なら、いいや。」
少し照れたように笑って、智がすっと左手を差し出す。
「え?」
戸惑う私の右手をギュッと握り、
「…こんな時間だからさ、手も繋げるでしょ。」
なんて。
「うん。」
私もギュッとその手を握り返す。
雨上がりの朝、キミと
手を繋ぐ……。
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