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□『ちゃんと、ずっと』
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「翔ちゃん…なんて、もう呼ばない方がいいのかもね。」
「なんだよ、急に。」
「あーあ、私も嵐だったらよかったのにな。」
「はぁ?」
「嵐だったらね、翔ちゃんって呼び続けられるでしょ?」
手にしていた缶ビールを一口飲み、翔ちゃんは私の横に座る。
「じゃあさ、嵐ならどのポジションやるよ?リーダー?」
「え?ん〜、無理よね、歌もダンスも完璧にはこなせない。」
「相葉氏?」
「…私、天然キャラじゃないから。」
「だな。じゃ、ニノ?」
「あの器用さは無理。」
「アンタ不器用極まりないからね〜。」
「…笑いながら言わないでよ。」
「あははは。じゃあ、松潤?」
「………キラキラだもんね、潤君。」
「はい、終了で〜す。嵐には入れません。」
楽しそうな翔ちゃんが、急に真面目な顔になる。
「……その座り方……俺と距離を取ろうとしてるだろ?『翔ちゃん』まで止めようとするなんて、どういうつもりだよ。」
そう言われ、ソファーの上で膝を抱えてる自分を見返す。
「俺がデビューするって決まった時も、初めての国立ライブの後も、紅白の司会やった時の正月も…そうやって座ってた。」
「……そう…だったかしら。」
膝を下ろし、座りなおす。
「翔ちゃんがさ、遠いなぁって。私の知ってる翔ちゃんは、もしかして、もういないのかなって。」
「…お前がいるから、『翔ちゃん』でいられるんだけど?」
「?」
「お前といるときはさ、俺は肩肘張らずに、何にも考えずに『翔ちゃん』でいられるんだから。」
「…私、翔ちゃんって呼び続けてもいいの?……離れていかなくても…いい?」
私の言葉に、翔ちゃんはふっと優しい顔をする。そして、
「お前はやっぱり不器用極まりないな。離れていったって、俺が追いかけるから。」
「翔ちゃん…」
「あと、俺は、お前が好きだよ。」
頭をポンッとひとつ叩かれる。
「……うん。ありがと。一生覚えとくね。」
「そうしてくれると助かります。もう二度と言わないから。」
「…だと思った。」
照れ隠しにビールを飲み干す翔ちゃん。
ちゃんと覚えとくから、
ちゃんと、ずっと、好きでいてね。
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