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□『ライバル』
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「ね、ちょっとハサミ貸してよ。」

「え?ハサミ?」

「そ、ハサミ。ないとか言わないよな?」

「ハサミくらいありますから。」

ネイルを施したばかりの爪先にフッと息を吹き掛ける。

「あ、いいよ、自分で取るからさ、どのへんにある?」

「えーっと、あっちの2番目の引き出しかな?」

「あっちってどっちだよ。」

潤は呆れ顔でリビングから寝室へ移動。

「ここー?」

「んー、たぶんね。」

爪先が気になり、返事もちょっと適当に…。

急に潤の声が聞こえなくなった瞬間………

「あーっっっっ!!」

大変なことを思い出し、急いで寝室へ。

でも、時すでに遅し……。

「………何これ…」

固まっている潤から、ファイルを奪う。

「………見ちゃった?」

「……見ちゃった。っていうか、何、それ。」

「…。」

「それさ、俺じゃね?」

「………そうよ、ぜーーんぶ'松潤'。松本潤よ。潤が載ってる雑誌、多すぎるから毎月立ち読みして、一番好きな顔してるのを買うの。で、ファイリングしてるの。別にいいでしょ?私の趣味なんだから。何か文句ございます?」

恥ずかしさを隠すように、早口で説明する。

「………いいや、文句はないけど。……可愛いコトやってんなーって思ってさ。」

「どうせバカにしてるんでしょ?切り抜き集めるなんて子供みたいって。」

「バカにしてないよ。っていうか、何で怒ってんだよ。」

「お、怒ってなんかないわっ。」

ファイルを引き出しに戻していると、後ろからそっと抱き締められる。

「そのファイル、いつ見てんの?」

「………会えない日が続いた時は、ファイルや雑誌やDVDで、嵐の'松潤'みてるの。」

「ふーん。'松潤'に癒してもらうんだ。……なーんか複雑。」

ちょっと甘えたような、拗ねた声が耳元をくすぐる。

「'松潤'好きなんだもん。」

「ライバルだな、'松潤'は。……ま、'松潤'なんかに、譲らねーけど。」

くるりと振り向かされ、チュッと小さな音を立てキスをされる。

「……くすっ。ね、潤。」

「ん?」

「続けても、いい?私の趣味。」

「ふっ。いいよ。でもさ、オマエの一番は、俺だからな?」

私の一番好きな顔で、ふっと笑う潤。

「くすっ。うん。」

やっぱり、抱き締めてくれる潤が一番。


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