本棚V
□『糸』
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『買わないの?』
震えだしたスマホに現れたメッセージ
『もう買った?』
『ネット派?』
次々と現れるメッセージに
息が止まりそうになる。
慌てて周囲を見渡すと
キャップを深く被った見慣れた顔が
ヒラヒラと左手を振っている。
「!?」
「びっくりし過ぎだから。なに、仕事終わったの?」
「え?あ、うん…。」
「ね、腹へってない?」
戸惑う私を無視して、
ずっと昔から変わらない
いつものカズがそこにいて…。
「ね、ちょっと聞いてんの?」
キャップのツバを少しあげ、
私の顔を覗き込む。
「あ、うん。聞いてる。ご飯、まだ食べてないけど…。」
「あ、そう?ならさ、一緒に飯食わない?なんかさぁ、お取り寄せのいいやつ貰って、冷凍庫に入れっぱなんだよね。」
そう言ってさっさと歩き始めるカズ。
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
結局、カズの車でマンションまで来てしまった。
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