本棚V
□『今年も…』
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『s.s』
「ねぇ、聞いてる?」
「……」
「もぅ。火星に代わって折檻よ!」
「ブハッ。」
「わっ!やっ!ちょっと!ビールこぼれてるっ!」
「いやいや、お前が変なこと言うからだろー?うわっ!パソコンにかかりそうだったじゃん。」
慌ててティッシュでパタパタと
こぼれたビールを拭く翔。
「くすっ。ねー、あのセーラームーンのコスプレ貰ったの?」
「貰うかよ!」
「えー。可愛かったのに。」
「万が一もらったとしてさ、あれ、いつ着るんだよ。」
「えっと、私が仕事でツラいとき?」
「はっ?何、お前笑わすために俺が着るの?」
「うん。笑い転げて元気になるの。」
「お前最悪だな。彼氏の女装見て笑い転げるって。」
呆れたように笑いながら、パタンとパソコンを閉じ、グラスをキッチンに持ってきた翔を、思わずじっと見つめてしまった。
「彼氏って自覚、あったんだ…。」
「あるわ。ったく。」
その瞬間、後ろからギュッと抱き締められた。
「しょ、翔…?」
「…毎年恒例だけどさ…今年も、なかなか会えないと思うんだぁ。」
「…うん。」
「お前が仕事でツラくても、こうしてやれないこと多いと思うんだぁ。」
「…うん。」
「でもさ、俺、今年もちゃんとお前のこと、好きだから。それだけは信じて?」
「…うん。信じてるよ。」
「信じてることも、信じてるけどさ…」
不器用な翔の精一杯の告白。
「私には、翔だけだよ。」
今年もあなたが大好き。
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