小説

□くおりてぃ・おぶ・らいふ
1ページ/2ページ

「あ〜せみの鳴き声が聞こえるよ〜なかじ〜」

「ソレは幻聴だ今はまだ蝉が起きてくる季節ではない」

「じゃぁ何でこんなに熱いのかなぁ?そしてどうしてこんなにひもじいのかなぁ」

「・・・知らん」

ここはとあるアパートの一室
その部屋にはとある二人が居た

「クオリティ・オブ・ライフ、意味・生活の質
 生活の質を上げるために出した政府の政策」

一人は、辞書を片手に意味を読み上げた学ランマフラーの青年

「で、今俺らの生活の質を上げよるためにいるものって?」

一人は、半そで半パンのサーファー青年
いま、彼らには決定的に足りない物があった
そう、それは・・・


 くおりてぃ・おぶ・らいふ


「・・・冷房が必要だな」

片手に持った下敷きで扇ぎつつ、今必要だと思った物を言う
それは今、ほしい物、しかし・・・

「でもさぁせんぷーきないし、クーラーなんてもちろんないし・・・
 風も吹いてこないし・・・
 どーすんのナカジー」

和室にうつぶせに寝転がる彼に、現在の悲惨な状況について説明さる
わかっている、この部屋にそんな大それた"冷房"と呼べる物が無いことは

「貴様が俺の部屋から出れば部屋の密集率が下がって少しは涼しくなると思うのだが」

ならば、と少しでも現状を良くしようと苦し紛れに言ってみる
実際、彼が出て行ったところでたいして現状に変わりは無いのだが

「えー!無理だよ、俺の部屋ナカジの部屋よりも太陽当たるから今サウナ状態なんだよー
 おれ今いったらしんじゃうよー」

あーそれもそうだなと、なんとなく納得してしまった
彼の部屋は確かにこの部屋よりも日当たりが良い
ここに住んだ直後、そのことについて自慢しに来たことを覚えている

「・・・DTOの家にたかりに行くか」

元隣の住人で今でもなにかと面倒を見てくれる彼のところにいければどうにかなる
そう思いサイフに手を伸ばす

「う〜ん、そこまでの片道の交通費あったっけ?」

ちゃりん

「無いな、ちなみに給料日は明後日だ」

ちゃりん
サイフを元の位置へ戻す
もう動くのも面倒くさいので投げた
綺麗に弧を描き、机の角に当たり地面へ落ちた

「あ〜俺もうここでしんでくのかなぁ
 明日の新聞には『アパートの一室で大学生孤独死』
 っていう見出しが一面に出るのかなぁ〜」

「孤独死じゃないだろ、ソレに出ても3面4面の片隅だ」

彼の戯言に冷静に返し
今みたサイフの中身を思い出す
・・・止めておこう、未来に絶望を感じることを考えるくらいなら
彼の戯言に付き合った方がましだ

「ナカジ〜俺がしんじゃっても強く生きてくんだよ〜
 俺、お空でナカジのこと見守ってあげるからね〜」

「丁寧にお断りしよう
 それに今のままで行くと両方とも間違いなく天にいく
 この三日間浅漬けしか食べてないからな」

空から俺の名を叫ぶ彼の姿が頭に浮かぶ
あぁ、俺の脳はもう思考するのさえ止めてしまったのか

「あ〜食べたい、お肉、お肉〜」

連呼されても、無いものは無い

「言うな、俺まで食いたくなる
 あぁ・・・しかし」

『腹減った〜』


「ぴんぽーん」

◇NEXT◇
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ