Revengeres

□旧友
16ページ/16ページ

"やられた。死ぬんだな…"
カメラからはみ出すほどにACが接近した時、自分でも驚くほど冷静だった。
恐怖が度を超えていたために感覚が麻痺しちゃったんだと思う。
走馬灯も見えなかったし、動きがスローモーションになることもなかった。
ただ死の元凶が自分に牙を剥いただけのこと。悲鳴なんてあげる暇もなかった。直後、衝撃と共に意識が刈り取られた。


気がつくと目の前は真っ暗だった。
前のめりになっているせいか息苦しい。
体を動かそうにもピクリとも動かない。
サウナに入ったときのように蒸し暑い。
死んだら天国に行くっていうのは嘘だったんだ、それともここは地獄かな。そんな事を考えてると瞼が重くなってきた…


どれくらい経ったんだろう。目を覚ますと辺りがザワザワと騒がしかった。
起きてる、いや生きてるとはっきり分かった理由は外からの騒音だ。
「俺はモグラだ!掘って掘って掘りまくる!ギュイィーン」

耳鳴りがするほどの声。でもモグラ?
どうやら救出の為に頑張ってくれてるみたい。眠ってたおかげか体は少し動くようになってた。試しに自分の顔に触れてみると無機質な感触、その時になってようやくヘルメットをしていることに気付いた。
無理やり脱ぎ、暗闇から抜け出したと思ったらまた暗闇だった。もっとも、完全な暗闇ではないみたい。壁に付いてる赤いランプがチカチカと点滅し続けている。それを見てると・・・

光弾に貫かれていくMT―――

爆風で引きちぎれる人―――

視界いっぱいに迫る青いAC―――

記憶が鮮明になるにつれて麻痺していた恐怖感がこみ上げてくる。
手の震えが止まらない。涙がとめどなく溢れてくる。
そのまま、脱いだばかりのヘルメットの中に嘔吐してしまった。


どれくらい泣いてたのだろう。一時間位は経っている気がする。
でも泣いてたって何も始まらない。コクピットから脱出しないと。
手探りでハッチの開閉スイッチを探すけど見つからない。それ以前に電源が生きてるのかすら怪しい。
とりあえず暗闇の中で一際目立っている
赤いランプを調べてみる。
ランプの下には、黄色と黒の縞枠にプラ製のフタ、そして奥には赤いレバー。
普段は全く触らず、存在すら忘れかけてた装備―――脱出装置だった。

外では相変わらず救出作業が続いてるみたいだけど何時まで掛かるかわからないし、その前に暑さと…臭いで窒息死してしまう。
意を決すると、フタを開いてレバーを回した。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ