359story

□戦場の華
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「しょ、諸葛亮殿…私がいくら蜀軍の中でも小柄とは言え、女性の代わりになれるほど小さくはありませんっ」

いつもは冷静な趙雲だが、やはり今は焦っているようだ。
だがそれもそうである。女装をしなくてなならない事が明白に伝わっているからだ。

「そこのところは大丈夫ですよ、月英と共に私の作った秘薬で少し体を小さくできるようになる事は実証済みです。」

そう言って諸葛亮は袖から小さな小瓶を取り出して見せた。

「諸葛亮って人、何だか噂通り凄い人なんだね…」

小喬は近くにいた姜維にこっそりと言う。

「はいっ!私は丞相を尊敬しています!あれくらいなら近いうちに私も作れます!」

そんな恐ろしい事を聞いていたのは馬超だった。
ちらっと馬超は趙雲と姜維を盗み見る。

「大丈夫ですよ、護衛兵を一人つけましょう。怪我をする心配はありません。」

馬超はそれを聞くと姜維の襟元を引っ張って広間を出て行った。


「そこで、趙雲殿は今日から明日にかけて小喬殿と行動を共にしてもらいます。
小喬殿に似るように頑張って下さいね。ではこれにて解散です。」

諸葛亮は要件だけを一方的に言うとそそくさと自室へと戻っていっしまった。

「小喬殿、大丈夫ですよ、子龍は見掛け通り女子には興味ないから万が一と言うことはない。」

劉備はフオローになっていないフオローを言って小喬を立たせた。

「殿…諸葛亮殿を止めて下さらないのですか?」

趙雲は半分泣きそうになりながら劉備に言う。
無論劉備は

「子龍、軍の為にも頑張ってくれ。」

と、少し申し訳なさそうに励ますだけであった。
仕方ないと、趙雲は諦めたように小喬を連れて自亭へと歩き出した。




「変な軍だね、蜀って。」

小喬は趙雲邸を見回しながら笑って言う。

「そうですね、でも諸葛亮殿はあれでも素晴らしい軍師なのですよ。」

「そうだね、陸遜も言ってたよ」

小喬はあまり警戒心はないようで、すっかりのんびりモードに入っていた。
そんな小喬に驚いてるのは趙雲である。

「何故その様に警戒心がないのですか?私は仮にも男ですよ。」

「う〜ん、だってそんな感じじゃないもん。これから二日間よろしくね♪」

小喬はそう言ってにこっと笑って返す。
妹がいたらきっとこんな感じなのだろうか…
趙雲は心中でそう思った。
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