359story

□戦場の華
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諸葛亮がそう言うや否や、辺りに居た者全てが固まりつく。

「しょ、諸葛亮よ…確に敵国ではあるが仮にも女子(オナゴ)であるぞ。幾ら何でもそれは酷では……」

劉備は若干表情を引きつりながらもにこやかに振る舞う。
辺りのの者は皆、諸葛亮から一歩引いていた。

「いや〜!あたしは周瑜様の奥様なんだからぁ〜!!」

小喬は自分の身を守るように抱きしめながら泣く。

「殿も小喬殿も誤解ですよ。」

諸葛亮は冷静に淡々と答えた。

「貴殿のは冗談に聞こえぬ…」

馬超は呆れたように言う。

「何かの策ですよね?丞相」

馬超のすぐ横に居た姜維はにこにこしながら聞き返した。

「さすが私の愛弟子ですね、姜維」

策でよかった…と皆心の中で思っているような溜め息がほぼ同時に聞こえた。

「今度の策を説明いたします。小喬殿をここにお連れしたのもその為です。」

「さすが丞相ですね!」

にこにこと嬉しそうに笑う姜維は諸葛亮に絶対の信頼を置いている。
勿論他の将もそれは同じだが、時折どうでもいい策まで思い付く諸葛亮がいるのも事実だ。

「小喬殿はご本人も言うように呉の軍師、周瑜殿の奥方です。
呉と親密関係を上げるために小喬殿をお借りいたすのです。」

諸葛亮はそう言って劉備に笑いかけた。
何かを企んでいる笑顔であるのは明白だった。

「小喬殿をお借りするといっても借りるのは着物のみです。」

「諸葛亮殿、少し意味が分かり難いのですが…」

趙雲はそう言って苦い顔をする。
諸葛亮はそんな趙雲を見ると極上の笑みを浮かべた。

「小喬殿の身代わりとなって呉に侵入してもらいます。」

「なるほど…それは上策ですな。しかしその役は誰がするのだ?近衛兵がか?」

関羽は腹まで伸びた髭を透くように触りながら聞いた。

「近衛兵では力量的にも力不足です。ここは武将の方にお願いを。」

そう言って諸葛亮は微笑んだ。
嫌な予感がすると皆、青ざめかえる。

「年齢、体格からして適してるのは趙雲殿か姜維です。」

ここでほっとしたのは趙雲以外の全員だった。
大方この時点で次の事は察しが付く。

「姜維はまだ呉群の本拠地に突入が出来る程の実力はありません。
そこでここは趙雲殿に小喬殿の代わりをしてもらいます。」
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