359story

□青龍放流姫
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「………」

失礼だとは分かってはいるが、蜀とは比べ物にならないほど立派な魏の湯殿に暫し言葉を失う趙雲。
此ほどまでに大差がある魏と自国の懐の温かさに涙が出そうになる。


「さぁ趙雲殿。まずは体を清めて頂けますか?」

甄姫はふふと趙雲に笑い掛けて衣服の装飾品を外し出した。
いつも曹丕の鎧の着付けなどを手伝っている為か手慣れている…。

「あっ、ちょっ!?」

焦る趙雲だが、力任せにその手を退ける訳にもいかず、只無意味な言葉だけが口を着いて出る。

趙雲は上半身の衣服を甄姫に剥かれたところで、今度は張コウにバトンタッチをされて湯殿へ連れて入られた。

「待って下さい!風呂ぐらい一人で入れますっ」
「いえ、いけませんよ趙雲殿。貴方のその羨ましい程の餅肌をゴシゴシと無粋に洗う様が見てとれます。私がちゃんとしたやり方をお教え致しますよ!さぁ美しく!!洗いましょう!レッツウォッシング☆」

変な台詞と立ち回りに翻弄され、危うく醜態を晒すところだった。
幾ら男同士だからとて、相手による。
剥さられそうになった衣服を取り返し、身を守るように恥ずかしい所を隠して一歩後ずさるが、張コウはジリジリと壁際に趙雲を追いやってくるでわないか。

「冗談は止めて下さい!!」

それで止めるような世の中そんなに甘くはない。
一瞬犯られるのではないかとも思ってしまう程、目がマジだ。
これはヤバイと身の危険を感じ、辺り構わず騒ぎ出した趙雲の声を聞いて駆け付けたのか、湯殿の扉が勢い良く開き、夏候惇が入ってきた。

「一体何の騒ぎだ!」

扉を開けた時に、半泣きの趙雲と目が合う。

「おや?これは夏候惇殿ではありませんか。どうかしました?」
「いや…悲鳴らしい声が聞こえたので来たのだが…」

張コウは何がですか?と趙雲の最後の抵抗であった衣服を取り上げた。
途端に顔面を朱に染め、口をぱくぱくとさせる趙雲。

「みて見ろ。怯えているではないか」
「とんでもないですよ将軍!」

顔から体中に朱色が広まっている趙雲を敵ながら憐れにも思ってしまう。
どうらや張コウでは役不足だろうな…。と思った瞬間、夏候惇は閃いた。

「張コウ殿…。」
「何ですか?」
「湯気で化粧が落ちているぞ」
「いや〜〜〜ッ!!」

二人を残し、もうこの役は夏候惇殿にお任せ致します!と物凄い勢いで化粧直しに走って行った張コウを見送った。
さぁ、残る問題の種がココにもう1つ残っている。
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