359story

□貧民恨歌
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それから暫く。
趙雲は一人孤立して戦っていた。
数にして二十人近くの敵に囲まれながらも奮戦している。
なぜこんなことになったのだろうか。
いつの間にやら味方も消えてしまっており、おまけに左腕も負傷している。
いい加減、耐え切れないか…。
そう思った矢先、あのダニ声がまた聞こえてきた。
今度は普通に気合を叫びながら駆け付けて来る。

「趙雲殿!!無事か!?」
その声とほぼ同時、高く弓の音が空を切って敵兵の喉を貫いた。
それが合図であったかのように次々と味方が現れザッと趙雲をかばう様に取り囲んだ。

「趙雲殿!!」
再び名を呼ばれて、趙雲はハッとした。
すぐ傍に心配そうな馬超の顔があった。
ついでに何か微妙な違和感もあったが。

「あ…ああ、すみません、馬超殿」
すぐにそう言ったのだが、馬超は目ざとくも趙雲の左腕の傷を見逃さず、グイッと自分の目の前まで腕を掴み寄せ、傷口を見る。

「すごい怪我ではないか!!早く回復しなければ!!」
「いえ…これくらいどうってこと…」
あまりの慌てっぷりに趙雲が苦笑していると、馬超はいきなりおかしな行動に出た。
なんと、胸から肉まんを取り出したのだ。
そう、胸元ではなく胸から。
当然趙雲は驚愕する。というよりもう、予想外すぎる行動があまりに多いためショック状態になって硬直した。
そして同時に悟る。さっきの馬超への違和感は、これだったのだ。
胸がある。

「ななななな…!!!!馬超殿、貴方どこから肉まん出してるのです!!」
「胸からだが、何か」
「何かもくそもあるか!!なんでそんなとこに…!!」
「いや、いろんなとこに入れてないと持ち歩きが不便でな」
「持ち歩くな!!!!」
「え〜〜」

趙雲のツッコミに、馬超は不服そうに唇を尖らせる。
ここぞとばかりに趙雲は追い討ちをかけ、

「大体、分かっているのか!?ここは戦場なんだぞ、肉まんにばかりかまけてるなど…!!!」
すると馬超はムスリとした表情になり、子供の様に頬を膨らませ

「だが、劉備殿と諸葛亮殿から…」
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