短編
□全部、夏のせい。
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7月なのに、こんな熱い日が続いて、私は死にそうな位にイラついていた。
「何なの!!この湿気、気温、…ありえないんだけど!!」
机の叩きながら叫んだ私には、冷たい視線が刺さる。こんな部分が冷たくても、意味ないんだよ。
「しかたねぇだろ、コレばっかりは地球のせいなんだから…」
大人な態度で私を宥めようとしているのは、ちょびヒゲがウザい草薙先生こと動物バカ。←なんか、逆になってるかも…。
「死ね、金持ちのクセに何なんだ、私の苦労を知った風に…ムカつくんだよ!」
八つ当たりしかできない私は、近付いてきた先生に消しゴムを投げてやる。
喰らえ、ピエール(消しゴムの名前)の体当たりを!!
「そんな怒んなよ、学校にいる時は快適だろ?」
「どこが?蒸し暑いんだよ、窓開けて扇風機を一人一台よこせよ。金なら余るほど持ってんだろ?動物バカじゃなくても、あのアホメガネなら、取り付け込みでくれるだろ」
下敷きで自分を扇ぎながら、先生に対してキレてる私は頭が沸騰していた。たぶん、何も考えてないはず。
「そんなこと言ったって、無理だろ。勝手に扇風機付けたら怒られるからな」
普通に断りやがった…。
爽やかに笑う、その顔が大嫌いで…、何もかもがムカつく。
なんで、こんな奴が私の先生なの?できるなら、悟郎ちゃんが先生の方が良かった…。
「もう、いい…。早く終わらせよ、帰りたいから」
補習を終わらせれば、この暑さから逃げられる。…なのに、
「いやー…俺としては、もうちょい このままが良いんだけどな」
…なんて言いやがったよ、このバカ。頭おかしいんじゃないか?
照れたように笑う、このバカの頭を覗いてみたいと思ったよ。
だって、補習をやらないって言ったのと同じなんだよ?コレって、私の卒業のための学力UPが狙いでしょ?ホントはアホ4人組のためだけど…。
「意味分んないんだけど、何がしたいの?」
「あー、でもな、生徒にこんなこと言うのもな…」
私の質問に答えないでブツブツ言ってるバカは、愛がどうのとほざいてる。
「結局、何さ」
「それは、あー…。もう少し、お前と一緒にいたいんだよってことです、はい」
私と一緒にいたい…、ってなんで?
「意味分んないんだけど…私は帰りたいの、ここにいたくないし」
始まらない補習を待つよりも、帰って宿題をやった方がマシだと思って席を立つと、バカが腕を掴んできた。
何か、と思って見るとバカが真剣な目で
「じゃあ、うちでやろうぜ。涼しいし、一緒にいれる」
なんか、変な感じ…。こう、ムズムズするっていうか…。
何で?
「なんで、先生の家に行かなきゃなんないの?一緒にいたいとも思わないし」
なんか、違う。こんな言葉じゃない方が…。
「そんなこと言うなよー。折角、言ったのに」
悲しそうな顔で見てくる先生に、何か言いたくて。でも、それが何かわからない。
「あっ、でも、補習をちゃんとするんだったら、考えてあげてもいいですよ」
「本当か?だったら、ちゃんと教えてやるよ」
何故か、こんなバカな先生を可愛いと思っちゃったりして。
私は、暑さに脳までやられたんでしょうか?
頬に集まる熱が、さらに体温を上げることになったけど、先生は気付かない。
顔が赤かったのは、教室が暑かったから。
「ずっと好きだったんだよなぁ、冴木のこと」
「へっ?」
「だから、冴木には必要ない補習を受けさせるのに、頑張ったんだ」
「変なこと頑張んなよ、アホだろ?私、補習受けなくて良かったんだ。…さようなら、先生」
なんかグダグダ。
アレですよ、途中から二人っきりってことで。