短編
□絶チル
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「桃太郎、大好きー」
そう言って抱きしめると嬉しそうにすり寄ってくるモモンガのキミに、私は恋をしています。
「よく、こんな齧歯類が好きになれるな…お前って実は変態なんじゃ」
「兵部くんに言われたくなーい。変態はキミでしょ、ロリコン犯罪者」
『そうだぞ、京介。お前の方が変態だよ、だってロリコンだぜ?』
ねー、と桃太郎と話してると兵部くんは怒ったのか、桃太郎を掴んで絞め始めた。
桃太郎が死んじゃうと思う…、ダメだよ、止めなきゃ。
「兵部くん、ダメ!桃太郎を苛めちゃダメ」
桃太郎を掴んでいる腕を掴んだけど、ビクともしない…。男女の差って厳しいね…。じゃない、早く助けないと。
がんばっても、がんばっても、兵部くんは桃太郎を放してくれなかった。
「桃太郎、頑張って!もうすぐ助けるから」
『たす、けてぇ…、苦しっ』
「きゃー、兵部くん、放してよ!死んじゃう、早く」
お願いしたら、兵部くんは桃太郎を放してくれた。桃太郎が死ななくて良かった…。
ほっとしてたら兵部くんが私を掴んで持ち上げていた。なんか怖いよ、兵部くん…。
「なんで、こんな齧歯類が好きなんだよ。キミはボクの妻になるはずだろ?」
妻になる…、そんなこともあったような。
覚えていない約束を兵部くんは言ってきたりするので、本当の話かどうか分からない。でも、なんか悲しそうなので、本当だと思ってあげる。
「でも、兵部くんは薫ちゃんたちをお嫁にするんでしょ?私いらないじゃん」
「それは別だ。女王は女王、キミはキミだよ」
「そんな一夫多妻制度はこの国にありませんよ、兵部くん」
桃太郎を撫でながら答えてあげると、兵部くんは考えだした。
この内に逃げてしまおう、と思ったが出来なかった。持ち上げられてるし、足に何か付いてる…。
「キミが妻の方がイイかも…、それに女王は違う人を好きになるからね」
「私はヤダな、桃太郎と一緒にイチャイチャする生活がいいもん」
「……ボクと結婚したら、桃太郎はキミのモノなのになぁ」
桃太郎が私のモノ…。
「兵部くん。私、結婚してもイイかも」
「じゃあ、決まりだね。キミはボクの妻であり、永遠の恋人だ」
なんか、話しが良いように解釈されてるけど私は桃太郎の恋人だからね。
兵部くんは書類上の夫だから、桃太郎の立場は愛人?かな…。
「兵部くんは、やっぱり変だよね。それとね、私、絶対に兵部くんの子供は産まないから、他の人に産んでもらってね。それで、早く別れよ。慰謝料は桃太郎で良いから」
「そんなところも好きだよ。でも、絶対に別れないから、子供も孕ますから、意地でも産んでもらうから」
『京介ってば、最悪だな…。こんなのと結婚する奴は可哀想だぜ』
それって、
「私って可哀想?」
桃太郎に聞くと目を逸らされてしまった。悲しい…。
「大丈夫だよ、キミはちゃんとボクが面倒みるから」
「兵部くん………。でも、子供は嫌」
「厳しいなぁ、こっちも…譲らないよ」
恋する人は、人間じゃなく。
愛する人は、他の奴が好き。
それでも、欲しいのは貪欲過ぎますか?