短編

□ハルヒコ
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暗い部屋、見えない自分。



「ねぇ、ハルヒコくん…いる?」



探していた人の名前を呼ぶが返事はない。




不安、

後悔、

恐怖、



…そんな感情が私を支配する。



ただ、彼を好きで…軽はずみな告白をしただけなのに、私はココにいる。

彼を傷つけたのかもしれない、でも…それでも彼を好きなことには後悔していないはずなのに。




「なんで、告白なんてしちゃったんだろ…」




彼がキョン子ちゃんを好きなのは分かってたはず。

諦めきれなかったのは彼が魅力的だから、彼が私を好きでいてくれたから。

座り込んで泣き始める自分にイラつきながら私は後悔した。


彼を好きになったことも、告白したことも、私がここに来たことも。




「こんな世界なら来なかった方が良かった…」




どうなるんだろう…彼が拒絶した私の存在は。

このまま、消えてしまうかもしれない…必要のない存在として。




「最後に聞きたかったな……返事」




どんな答えでも、彼の返事を聞きたかった。



いや、いっそ死んでしまった方がいいじゃ?彼の拒絶の言葉を聞かずに済むんだから。



止まった涙が頬を冷やす、顔をあげても何も見えない。






……死んでしまおう…





何も見えなくても、死ぬことはできる。


そう思っていたら、突然、光りが部屋を満たした。




「おい、…勝手に何してんだよ」




そこにいたのは彼だった。不機嫌な顔で私を見る彼は、もう私を嫌いなんでしょうか…?




「お前がいないからコッチは必死に探してたんだ、感謝しろよ」




照れたように差し出す手は暖かく、彼は本当に愛しい存在だ。






「…ありがとう……」



涙が乾いた頬を擦り、彼を見ると驚いたように私の頬に触れた。



「泣いてたのか?」



彼が聞いてきたことに答えないでいると、彼は笑って頬を引っ張ってきた。





「何泣いてたか知らねぇけど、お前は笑ってた方が良いぜ」





引っ張っていた頬を放すと彼は私の手を引いて部屋から出た。




外は光が満ちていて、今の私の心みたいだった。

こんな世界でも、来て良かったと思えるような…そんな気分だった。





「…あのね、ハルヒコくんが私を嫌いでも、私は頑張るよ」





私が言ったら、ハルヒコくんはムッとしたような顔をして掴んでいた腕を自分の方に引き寄せた。必然的に、私がハルヒコくんに近づく。





「誰も、お前が嫌いだなんて言ってないだろ。言っとくが、俺はお前が好きなんだよ!」





顔を赤くさせて彼が言ったのは、私への拒絶の言葉じゃなくて…寧ろ、愛の言葉だった。




「…なんだよ、不満か?お前だって俺のこと好きなんだろ?」

「う、ん……大好き、だよ」

「っ、あたりまえだろ!」





光をくれたのは、いつの日も貴方でした。










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