短編
□銀魂
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大好きです。
貴方にもっと、近づきたい…。
「なんて、ね。そんな風に考えてくれる女子をどう思いますか?」
前の席に座る桂くんに聞いてみると、フンと鼻で笑われてしまった。何かいけなかったのだろうか?
「そんな女子がいるはずないだろう。本物の女子なら、もっとこう、生々しい妄想を持っているに違いない」
「貴方の考える女子象はどうでもいいですから、質問に答えてくださいよ」
簡潔に、欲しい言葉をくださいね。と釘をさすと桂くんは考えてから話し出した。
ちゃんと考えて答えてくれる所は好きですよ。まぁ、最初からそうだったら、ですけど。
「そうだな、俺は考えるだけじゃなく、言ってくれれば嬉しいと思うな。言わねば伝わらんこともあるだろう」
そうか…、やっぱり伝えることが大切だよね。
その答えをノートに書きながら桂くんにお礼を言って教室から出る。
校庭には、まだ生徒が残っていて遊んでいる。その風景を横目に職員室に向かうと、職員室前の廊下にお目当ての人を発見した。だらけた格好でボーっとしている姿は先生のモノで。
「先生!いいですか?」
元気よく声をかけると、驚きもせずにこちらに振り向く先生。こんなんでも人気があるんだからすごいな、と思うのは本人以外なら誰でも思うことです。
「なんだ?分んない問題でもあったのか?先生も分んないから他の人に聞いてみなさい」
職員室のドアに手をかけて入ろうとする先生は、最初から私の話を聞こうとはしていない。
ここで帰られても良いんだけど、やっぱり質問はしといた方が得だもん。
「先生は、こうゆう女子をどう思いますか?」
先刻の桂くんと同じ質問。
「そんな女子、いるのかよ?まぁ、好みの女だったら良いけどよぉ…」
廊下の端に目が行く先生は想われている人だった、ストーカーみたいな変態女子に。
可哀想だと思ったが、私が何かしたら彼女は私を殺そうとするだろう。報復が怖いので、私ができることはなさそうだ。
「ありがとうございます、参考程度に覚えておきますね」
「おう、早く帰れよォ」
はい、と返事をして教室に戻ると教室には高杉くんがいた。
うん、なんか気不味いね。…不良な雰囲気が怖いな。高杉くんにも聞いた方が良いかな?
考えている内に自分の席に着いてしまい、高杉くんとの距離が縮まった。彼は私の斜め後ろの席に座っているからだ。
意を決して声をかける方に多数意見がきた為、声をかけることにした。脳内会議での結果ですよ、コレ。
「高杉くん、質問しても良いかな?」
できたら答えも欲しいな、と言って彼を見ると、彼は下げていた頭を私の方に向けた。
威圧的な目はやっぱり、私には苦手で、彼を真面目に見返すことはできない。聞いたところによると、笑った顔で彼を見るのが私の癖のようだ。
「高杉くんは、こんな女子をどう思いますか?」
皆と同じ質問、答える相手によって私の態度が変わります。だって、怖いもん。
「…どうも思わねぇよ、んな女」
「そっか…、ありがとう。こんな質問なんかに答えてくれて」
じゃあ、と挨拶をして帰ろうと思ったら高杉くんが腕を掴んできた。
何故、私を引き止めたのだろう?と思ったが、彼を恐怖の対象に捉える自分が情けないと思った。クラスメイトに怯えるって、どうよ。
「…お前は、そんなふうに誰かを想ってんのか?」
一瞬だけ、時間が止まってしまった。
だって、この不良、私のこと聞いてきたんだよ?なんで私に興味があるみたいな行動を取るのさ…。
やっぱり、質問したのはいけなかったかな?罰が当たった?
「なんで、そんなこと聞くんですか…?」
「なんでもいいだろ。で、どうなんだ?」
「そんなこともある、としか言えませんね」
誰に対してとか、高杉くんに言ったら何かその人が可哀想になりますもん。
そう言ったら、高杉くんが腕を放してくれた。
「じゃあ、また明日。さようなら、高杉くん」
「あぁ‥」
そうして、本当に教室を出た私は、靴箱に向かうまでの時間で今日聞いた答えをまとめて覚悟を決めました。
告白はした方が良い、と。
陽が沈む時間になり、紅く染まる空に嬉しさを隠しきれず鼻歌を歌う。
もうすぐ、彼がここを通る。その時間まで私は電車を眺め続ける。
「私の明日が輝くか、そうでないかが決まる。そんな選択を私ではない人が決めるのは、なんてもどかしく、素敵なことなんでしょう」
思わず出た独り言に、さらに恥ずかしくなる。浮かれても、彼が私を選ぶ可能性なんて1ミリもないのに…。
片思いをする主人公の気持ちも分かるが、どうせなら両想いが良い。そう思うのは私だけじゃないはずだ。
「…また、アイツのせいで…」
小さい独り言が聞こえてきた。声のする方を見ると、彼がいた。
ボサボサした髪に不良の着る長ラン。オジサンのような彼は私の想い人。この時のために色んな人に質問したんだろ、自分。
そう、自分に言い聞かせ彼の前に出る。
「あの、すみません、」
私の声に気付いて、彼は私の顔を見る。あぁ、なんか無理かも…。
「なんだ、アンタ」
不審そうに私を見る彼はカッコ良くて、…って
違う、告白をしなければ!
「あの、私、ずっと前から貴方のことが好きでした。神威さんにボコボコにされて帰って行く姿を見て惚れました。私と付き合って下さい!」
一気に捲し立てるように言うと彼に頭を下げた。これでダメだったら、明日にでも高杉くんに言ってしまおう、告白がダメだったので昨日のことは聞かなかったことに、と。
そんなことを考えている私の頭に違和感を覚えた。撫でられてる…?
「アンタ、思ってたよりも頑張り屋だなぁ。俺も好きだったぜ、アンタのこと」
彼の言葉が頭の中で繰り返された。彼も私が好きだった。
「意味分んない歌を歌ってるトコとか、情けない俺を心配そうに見てたトコも、全部面白い」
顔をあげると彼は笑っていて、私はすごく恥ずかしくなった。
「さて、ここで選択だ。アンタは俺とこれから先の未来を歩むか、決まった期間だけの未来を共に歩むか…−どっちだ?」
これから先の未来…、なんかプロポーズみたいな響きだ。恥ずかしくなって、赤くなった顔を俯かせ彼に聞こえる声で
「貴方と共にこれから先の未来を歩みたいです…」
質問で手に入れたのは彼への告白権。
「正解だ。…ところで、お前さん、なんでアイツの名前を知っているんだ?」
「あ、私、銀魂高校のモノで、神楽ちゃんとはお友達なんです。だから、会ったことがあって…」
「今度からはアイツに会ったら、気付かれる前に逃げろよ?」
「はい、努力します…」