短編

□文次とプール
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文次郎とプール。



やることはたくさんある夏休み。

退屈という意味で暇人な私は、プールに行こうと思った。

そこで、出てきた問題は一つ。誰と一緒に行くか、だ。

この前、暇だったので同じ学年の仲良し?メンバーでプールに行った時は災難だった。
七松は意味分らない遊びを始めるし、長次はプールなのに本を読んでいたし、仙様は存在がエロいし、食満は七松と一緒に変な遊びをしてたし、伊作はプールサイドで転んで寝込むし、文次は……お父さんみたいだったなぁ…。





うん、決めた。




「文次、一緒にプールに行きましょう」

「はぁ?」



文次と仙様の部屋をノックもせずに開けると、宿題をやっていたのか机に向かっている文次がいた。文次のくせに宿題やってるなんて、卑怯だ!とか思ったけど、こいつは真面目に宿題終わらせるよな…。

仙様はお出かけ中のようだったので、好都合とばかりに話しかけたが、間抜けな声が返ってきた。



「いや、プールに行こうって話だよ。分かる?」

「いや、それは分かってる。…お前、人の部屋に入る時はノックぐらいしろ」

「えっ、それってば、文次はいきなり部屋に入られると不味いことをしている、ってこと?」


真顔で聞けば、違うと怒鳴られた。怒鳴る方が怪しくなるだろう、と思ったのは言わないでおいたけど。


「で、なんで、いきなりプールなんだ?」

「暇だから」

「宿題は終わったのか?」

「文次ってプール嫌いなの?」

「話を逸らすな」



宿題って言葉はスルーしたかったけど、文次が頭を掴んできたので、素直に終わっていないと答えておいた。

ちゃんと答えたから、文次はそのまま頭を撫でてくれた。…恥ずかしい奴め。



「遊ぶんだったら、勉強ぐらい終わらせろ。そうしたら、考えんでもない」

「マジっすか……じゃあ、文次、勉強教えろよー」



タックルをするように抱きつけば、文次は真っ赤になって頭を叩いてきた。照れると暴力を振るうのはいかがなものだろう。

勉強なんて自分でできるだろう、と言ってくる文次を無視して部屋からプリントとノートを持ってくる。

いない仙様の机を借りて、勉強を始める。



「ここが分んないんだけどー、文次終わってる?」



数学のプリントを見せながら聞くと文次は既に終わっているプリントを見せてきて、どこだ?と近づいてくる。

ここー、と二次不等式の問題を見せると、ここ間違ってんじゃねぇか、とか言いながらちゃんと教えてくれる。ツンデレ家庭教師だな、こいつ。

そんな感じで半分くらい数学が終わった頃、文次がプールに行っても良い、と言ってくれた。


「じゃあ、今から支度しておけ!迎えにくるから」



それだけ残して、自分の支度を取りに行く。
廊下を歩いている時に仙様に出会ったけど、何かイラついていたから、そっとしておいた。


支度を持つと、走って自分の部屋から文次を迎えに行く。

支度をし終えたのか廊下で待っていた文次に声をかけて寮から出る。



「文次、ちゃんと遊ぶぞ!お前も、はしゃげよ」

「ちゃんと遊ぶって、意味わかんねぇだろ」

「文句を言ったって変わらんこともある。この前は遊ぶことが出来なかったからね」



文次もこの前の七松を思い出したのか、溜め息を吐いていた。

溜め息は幸せが逃げるらしい、と文次に言えば更に深い溜め息を吐いた。



私、何かした?







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