屍的、人生の送り方

□1話目
2ページ/2ページ







いつの間にか、寝ていたのか、保健室には誰もいなかった。不安になり、障子を開けると空が真っ黒に染まっていた。こんな時間まで寝ていたのか、と欠伸をして、誰かいないか辺りを見回した。庭は暗く、人工的な光が一切ないのが分かる。夜盲症…トリ目な私は人の姿など探せる訳もなく、大人しく縁側に座るだけで終わった。






「誰もいない…。独り、かぁ…」





今日の出来事と、自分の死について考えていると、たくさん眠ったにも関わらず、眠くなってきた。静かに立ち上がり、障子にぶつからないように部屋に戻ると、布団に潜り込んだ。




明日には、自分が生きていることを願い。神の存在を信じて、サンタの存在も信じて、奇跡に賭けてみたくなった。私が人間でいられるように、と。









静かに眠りに落ちた女は≪死に人≫。
生きていない彼女に帰る道はあるのだろうか?













「大丈夫、泣かないで下さい…」





静かに現れた影は女の頭を撫でて、一人、呟いた。その言葉に込められた意味は、同情と移情。


























夢を見た。死んだ後の家族の夢。


父も母も、みんな泣いていた。あぁ、私は本当に死んでしまったんだ、と認めさせられたような気分。醒めきった意識は、逆に私を殺した。






でも、母が一言、頑張って下さい、と笑ってくれたことが救いだった。いま、私がいる世界で、頑張らなければいけない、と思った。最期に聞いた母の言葉を守らないといけない。その思いが、私の原動力。覚悟を決めて、ここで生きると誓った夜は、誰かに頭を撫でてもらっているように、気持ち良いものだった。












前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ