・死も惜しまず(ヘムロック)
「ねぇ、文次郎……」
甘ったるい声で話かけてくる女は俺の最愛の彼女。
「なんだ?」
返事をすれば嬉しそうに笑って腕に絡みついてくる。
「もし私が攫われたり、殺されたりしたら、文次郎はどうしてくれる?」
そんな質問をされた時、俺はすぐに返事をした。
「お前に何かあったら、この命に代えてもお前を助ける。殺されていたのなら、俺がお前を殺した人間と関係者全員を殺してやる」
「じゃあ、文次郎はその後どうするの?」
「あ?……そうだな、お前が死んでたら俺も死んでやっても良いかもな」
「私のために死んでくれるの?……素敵、愛してるわ」
寄りそう二人は最高の時間を過ごした。
いつの話だったのか思い出せないが、確かに彼女に約束した。
『命に代えて助ける』『お前が死んでたら俺も死ぬ』と。
『回り灯籠のように……』とはよく言ったモノだ。死ぬ前に過去を早送りのように振り返るとは……。
早く助け出さなければならないヤツがいるというのに、俺はこんな所で死ぬ気になっている。
約束すらも守れないバカタレだったのか、俺は。
自分の負傷よりも彼女の姿を探すべきなのに、楽しかった彼女との過去を見ている。
「くそッ、なんでこんなことになってんだ」
前を見れば、敵。振り返れば、敵。
敵陣に乗り込んだのは良いが、一介の忍たまが何かできるかと言えば、答えは“否”。
俺ができることは高が知れている。
向かってくる敵を何度消そうと、俺は彼女に近付けない。
彼女のことだけしか考えていなかった俺の背中から、鈍く何かが刺さる音が聞こえた。
背中で何が起こったのか認識するよりも早くに振り返り、腕を振る。
握った苦無が相手の顔に刺さる感触。――早く死ねよ。
彼女の手が、声が、存在が、俺を引き寄せる。
背中に刺さる苦無を抜き、走り出す。
「愛してる。……だから死ぬんじゃねぇぞっ」
身体に増えていく傷は彼女への愛の刻印。
死も惜しまずに愛を捧ぐ。
最期に見たのは彼女の笑顔。
「俺が死んだら意味ねぇよな……」
「そうかもね。……そうよ、文次郎が死ぬのなら私も死んであげるわ」
「お前、自分が何言ってるか分かってんのか?」
「わかってるつもりよ。貴方が私に言ってくれたじゃない『お前が死んでたら俺も死んでやっても良い』って」
だから、死ぬのよ。
そう言って微笑む彼女も俺と同じ傷を負っていた。
「「最期まで愛してる」」
最期の接吻は血の味がした。
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ブログに載せた文次夢を拍手にしました。
リサイクルではないです。
あまりにも更新出来ていないので、拍手夢だけでも変更しておこうと思い載せたんです。
次の拍手夢はグロです。
またも、ブログに載せた夢です。
綾部殺されちゃいます。
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