「Ib」短編。

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「よいしょ!っと。」

重たいマネキン、私じゃ絶対動かせないけど、ギャリーが代わりに動かしてくれる。難しい字も読んでくれるし、ギャリーはすごいな・・・。

「これでいいかしらね。」

「ありがと。」

「うふふ、どういたしまして。」

ギャリーがドアを開けてくれて、赤い部屋を出た。




「ぎゃーーっ!」

突然出てきた白い頭にびっくりして、また腰を抜かしたギャリー。・・・ギャリーって、もしかして恐がりなのかな。

「っ、この!!」

「あ。」

蹴飛ばそうとするギャリーの手を咄嗟に掴んだ。

「イヴ?」

「ギャリー、『暴力はダメ』・・・。」

「・・・。そうね、大人気なかったわ。」

「うん。」





「ぎゃーーっ!!」


ギャリー、また叫んでる。傍にいた頭のない像が急に動き出して、こっちに来る。

「イヴ!逃げるわよ!」

「うん。」

「って、なにのんきに歩いてんの!!」

「あ。」

ギャリーは私の手を握って出口まで走った。

「ほら走って!」

「・・・でもギャリー、『美術館の中は、静かにしてなきゃダメ』なんだよ・・・?」

「・・・まぁ、そりゃそうだけど。ってまさかあんた!今までずっと歩いてあいつらから逃げてたの?」

「うん・・・。」

「・・・・・・。」

叫び声一つあげないと思ったら、そういう事。と、ギャリーの独り言が聞こえた。

ガシャッガシャアッ!!

「うわぁっ!」

壁に並んだ絵から、1人また1人と女の人が出てくる。

「もう、なんなのよ!

イヴ!ちょっとこれ持ってて!」

「?」

青いバラを渡されると、ふわっと体が浮いた、と思ったらギャリーに抱き抱えられた。そのままギャリーはすごい速さでドアまで走る。

「あ。ギャリー、後ろ。」

「っ、もう、邪魔よ!」

ギャリーが像に後ろ蹴りした。蹴られた像が後ろに倒れて・・・あ、像がドミノ倒しに。・・・ちょっと楽しい。

「ふふふっ、あははは・・・。」

「もう、この子ったら!なに笑ってるのよ。」

こっちは必死こいて走ってるっていうのに。呆れたように言うギャリー。

だって楽しいんだもん。

「ふふふっ・・・でもねギャリー、『走っちゃダメ』だし、『暴力はダメ』なんだよ?」

「・・・・・・。」

「あとね、『大声で話すのもダメ』なんだよ。」

「・・・謝るわ。でもねイヴ、うまく言えないけど、しょうがない時ってあるのよ!だから、少しの間、我慢しててちょうだい!」

「・・・。うん。」

私の分もいっぱい避けて、たくさん走って、ギャリーはなんとか次のドアに入った。足でドアを閉めて、通路を走る。

(ドアを蹴って閉めるのも、しょうがない時だから、なのかな。)

ギャリーって、足器用だな。膝に手をやって肩で息してる。

あ、ちゃんとお礼言わなきゃ。

「ギ・・・。」

足に力が入んない。痛い、膝のとこ床で打った。

「・・・ギャ、リィ?」

「!?・・・イヴ!どうしたの!?」

体が床に引っ張られる重さと、ギャリーの声が頭に響いた。


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