学園ヘヴン
□デザートタイム
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日が落ち、点呼も終わった頃、啓太は足をぶらぶらさせながら、ある人を待っていた。
「まだかな…?」
ベットに腰かけ、少し大きめのパジャマに身を包んだ啓太は軽く細めた瞳で、ドアを見る。
啓太の視線がドアに向いてすぐ、コンコン、と落ち着いたノックの音が響いた。
途端、啓太は瞳を輝かせ、ぱたぱた、とドアに駆け寄る。
「こんばんは、伊藤くん」
「七条さん!」
柔和な微笑みを浮かべている恋人、七条臣を啓太は上目づかいで見詰めた。
紺色のパジャマに身を包んだ七条は、そんな啓太の頭をくしゃりと撫でる。
ついでに、とでも言うようにその髪に口付けを落とすと、啓太の頬にすっと赤みがさした。
「しっ、七条さんっ」
「失礼、髪が柔らかそうだったのでつい…」
くすくすと笑いながら、七条は言い訳にもならない理由を述べてみせる。
「それより、部屋に入れて貰えますか?長い間、パジャマで廊下にいる訳にはいきませんから」
「……それも、そうですね。どうぞ」
部屋に七条を招き入れ、啓太はパタン、とドアを閉めた。
「あれ?七条さん、それなんですか?」
今まで啓太は気付いてはいなかったが、七条の手には、花の絵が描かれた白い箱を持っていた。
ちょうど、ケーキ等を入れるような、小さめの。
「シュークリームですよ、伊藤くんの好きな苺の入った」
郁にはナイショですよ?と付け足して、七条は唇の前に指を立てた。
箱を開ければ、ふわりと苺の甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐった。
「わあ…!」
甘いものに目がない啓太は、キラキラと瞳を輝かせ、シュークリームを見た。
好物の苺がクリームの上にちょこんと乗っていて、その上にチョコスプレーがかかっている。
小さめのそれは、少し高価そうにも見えた。
「どうぞ、一緒に食べましょう?」
二つあった内の一つを手渡されて、啓太はそれに乗った苺をかじってみた。
少し酸味が強めの苺は、チョコスプレーによく合っていて、シューの方にも口をつけてみれば、柔らかなシューと甘すぎないクリームがお互いを引き立てあっていた。
「ん…これ、美味しいですね!」
「ええ、僕もお気に入りなんです」
「今度このお店連れて行って貰えますか?」
「僕で良ければ喜んで」
「約束ですよ?」
そんかたわいもない会話をしながら、シュークリームを食べ進めていけば、小さなシュークリームはすぐに無くなった。
「伊藤くん、クリームがついてますよ」
啓太の唇の端についたクリームを指で拭って、七条はその指をぺろっと嘗めた。
「し、七条さん!」
本日二度目になる慌てた声に、七条はくすくすと笑った。
「本当に伊藤くんは可愛いですね」
「か、可愛いって…」
「食べちゃいたいくらいです」
「へ…?」
最後の一言に、啓太は聞き間違えではなかろうか、と自分の耳を疑った。