最遊記

□洗濯日和、
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日差しが柔らかく降り注ぐ青空の下、バサリと物干し竿にシーツが掛けられた。

空に浮かぶ雲の色をしたそれは、少しばかり肌寒い風に吹かれてひらひらと揺れる。

シーツの他にも、幾つか洗濯物が同じように揺られていた。


「さて、と。洗濯は終わりですね」


そう言って八戒はぱん、と手を叩いた。

緩やかな風が、八戒の黒髪をふわふわと靡かせる。


「八戒、何やってんの?」


触角のような紅い髪をぴょこんと飛び出させ、悟浄がシーツの向こう側から顔を出す。


「見てのとうり、洗濯です。もう終わりましたけどね」


軽く背伸びをした八戒にご苦労さん、と声を掛け、悟浄は触り心地の良い八戒の髪を指先で撫でた。


「ん〜?シーツって一昨日も洗濯してなかったか?」

「ええ、ついでに言うと昨日も干してましたよ」

「シーツってそんなに小まめに換えるもん?」


夏ならともかく、今は雪すらちらつくような季節、それほど洗濯する必要性は感じられない。

清潔感はあるかもしれないが。


「毎晩のように僕のシーツは汚れる羽目になりますからね、誰かさんのおかげで」


小さな嘆息を零し、八戒はちらりと流し目を悟浄へと向ける。

その視線と言葉に込められた意味を汲み取ったのか、悟浄は一瞬だけ動きを止めた。


「……俺のせい?」

「別に悟浄を責めるつもりじゃありませんよ?でも、僕のシーツ全部洗濯しちゃいましたから、今夜は悟浄のベットで寝かせて下さいね?」

「……それ、どーゆー意味で言ってる?」


悟浄の質問に返答はなく、八戒はただ曖昧な笑みを作るばかりだ。


「誘ってる訳?」

「どうでしょう?…自由に受け取るといいですよ」


一瞬、掠るように悟浄の頬に触れた手は、故意か、それともただの偶然か。

真実は八戒のみぞ知る。


「……八戒」


緩やかな孤を描く八戒の唇に唇を重ね、悟浄は腕を八戒の背中へと回す。

キスを深くしようとする悟浄を、胸板を押すことで八戒が遮った。


「ちょっと待って下さい」

「…なんだよ」

「いるんでしょう?出てきなさい−−」


八戒が細めた瞳を向けた先には、一本の木。


「−−悟空」


八戒が声を掛けると、木陰から茶色い頭が見えた。

気まずそうに頭を掻きながら、悟空は金の瞳を伏せる。
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