ACE COMBAT     〜DOG OF WAR〜

□DANGER ZONE
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2005年
6月16日

午後8時13分


クロイツェ山中


俺とフランクリンは主戦場を離れ、クロイツェ山脈の森林地帯にいた。

このクロイツェ山脈はグリーメイアを縦断している大山脈で、この山脈をひたすら西に辿れば、セントラル・バース近郊に出られる筈なのだ。

だが、このクロイツェ山脈は予想以上の険しさだった。
山登りの経験が無い俺達二人は、山を嘗めていたとしか言いようがなかった

「フクラハギがパンパンだぁ…
もう歩けねぇ…
ていうか歩きたくねぇ!」

バタンと倒れ込むフランクリン。
M4カービンを近くの丸太に横たえ、フランクリンは深く息を吐く

「俺は座るだけにするよ…
一時間位寝てくれ」

横たわるフランクリンと、丸太に腰を下ろす俺。
クロイツェ山脈の森林地帯で、俺達は野営する事にした。

ベッドも毛布も無ければ、暖かいコーヒーや夕飯も無い。

ただ気温が下がっていく山中で、唯一の暖は火を起こして得るしか無い。
幸いライターは持っているし、乾燥した小枝も無造作に転がっていた。

しかし、主戦場から離れたとはいえ、この辺りに敵兵が居ない保証は無い。
敵兵が居るかもしれない場所で不用意に火を焚けば、自分達の所在を明かすに等しい。
慎重にならなければ……

「くそ寒ぃな畜生…
なぁ焚き火しねぇか?
寒くてたまんねぇよ」

おもむろに立ち上がると、フランクリンはそのままライターを取り出した

「止めとけフランクリン。
敵兵が居ないって保証は無いんだぜ?」

「そんなのにヒビッてたら寒さでオカシクなっちまう。
息が白くなる位だぜ?
このまま寝たら凍傷になるか凍死するかのどっちかだ…
俺は御免だね」

俺の意見を無視して、フランクリンは枯れ枝を集めて勝手に火を起こし始める。
瞬く間に燃え上がる枯れ枝を見て、俺は唖然としていた

「なぁに固まってんだよ?
お前もあたれ」

「あ…あぁ。
お前怖くねぇのか?」

「はぁ?」

笑いながらタバコを取り出したフランクリンは、俺にタバコを手渡しながら言葉を続けた

「一々こんな事でヒビッてたら、世の中一人で生きてくなんて無理だぜ?
まぁタバコでも吸って落ち着けよ」

差し出されたタバコを手に取り、とりあえず口にくわえてみた。
よく平気なもんだ。
フランクリンの神経が理解出来なかった

「まだグリーメイアがユークの一部だった頃な…」

タバコをくわえた俺を見ながら、フランクリンが唐突に話し始めた。
焚き火を囲っての昔話。
そんなトコだろう

「独立前の話か…
俺はハイスクールで勉強を頑張る学生だったな」

「学生か…
どうりで筆記の成績が良かった訳だ」

火のついた枯れ枝をフランクリンから渡され、その火種をタバコに移しながら、俺は学生時代に胸を馳せた。

軍人に憧れる事も無ければ、戦場の真っ只中に飛び込むなんて事も予想だにしていなかった学生時代。

しかしユークトバニア空軍の高度な展示飛行を目の当たりにし、漠然と空に対する想いを胸に宿したのも学生時代だった。

空軍パイロットになりたい。
俺もユークトバニア空軍の一員として、あの展示飛行に参加してみたい。
そう思った

「そういやお前は何やってたんだよ?
お前の昔話は聞いた事ねぇからな」

紫煙を吐き出したフランクリンは、短くなったタバコをもみ消しながら口を開いた

「俺は兵隊やってた…
少年兵って奴だ。
グリーメイア解放戦線。
お前も名前くらいは知ってるだろ?」



グリーメイア解放戦線


政治に無頓着な俺でも知っている。
グリーメイア独立の立役者。
ユークトバニアからグリーメイアが独立出来たのは、その解放戦線が展開したゲリラ闘争も強く影響していた。

ユークトバニア政府要人と軍施設を狙った攻撃。

そして移動するユークトバニア軍を狙った自爆テロ。

その影響で国内の治安は最悪。
解放戦線が対ユークトバニア闘争を本格化させた当時、グリーメイア国内では毎日の様に死者が出ていた。
連日マスコミを騒がせた反ユークトバニア政府組織。

それがグリーメイア解放戦線だった

「お前がテロリスト…
マジなのかよ…?」

固まる俺をよそに、フランクリンはタバコに火を付けながら頷く

「仲間だった連中は全員ユークトバニア政府に処刑されちまってな、今も生き残ってる奴らは懸賞首か国際指名手配のテロリスト…
けど解放戦線の幹部だった連中は、今じゃグリーメイア政府要人の顔馴染み。
俺は少年兵って事で無罪放免。
けど娑婆の空気は性に合わねぇ。
戦場の空気で育った人間は、戦場でしか生きていけない不器用な人間。
嫌というほど思い知ったね…」
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