ACE COMBAT     〜DOG OF WAR〜

□決意
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2005年

7月2日

15:10

ナルズガルド上空

高度15000ft


グリーメイア北部の中心都市ナルズガルド。
カレナ空軍による度重なる空爆と、熾烈な市街戦により廃墟と化したかつての大都市は、高度15000ftの高空からは、崩壊を免れたビルや教会の鐘楼以外の全てが灰色に染まり、人や生き物の息吹は感じられない。
辛うじて見える生存者が居るであろう証と言えば、あちこちで上がる灰色の煙と、片付けられた中央広場に造られた仮設のバラックとテントの群れだけだ

『こちらノルトヴィント。
各機聞け。
カレナ西部のゲオルグ空軍基地が、我が国への亡命を希望する大公一派の護衛に回る事となった。
なおゲオルグ空軍基地所属機はIFFはカレナ空軍のままだ。
機種はグリペンC。
数は12機。
Eー737がサポートに回っている。
間違えてもゲオルグ空軍基地所属機は撃墜するな』


「ゲオルグ空軍基地攻略の手間が省けたって訳か。
ノルトヴィント。
護衛に就いている戦力に変更は無いのか?」

モニターを操作し、ノルトヴィントから情報を受け取りながら、俺はレーダーを使って警戒を行う。
だいぶコックピットにも慣れて来た

『確認されている情報では、ミラージュの編隊が新たに加わった程度だ。
大公派の航空戦力はグリペンCが12機と、ミラージュ2000ー5が12機。
他に合流を希望する航空部隊も居る様だが、現段階での追加情報は無い。
なおゲオルグ空軍基地からの追加情報では、今回のクーデター未遂事件はカレナ大公と彼の側近達が中心となった和平派と、ハーメル首相率いる独裁政権を中心とした抗戦派が衝突し、内部分裂を起こした事に起因した必然的な内紛であるとの事だ。
クーデターを起こした和平派は、カレナ大公フェルディナンド六世を伴い亡命。
グリーメイア国内からカレナ公国に対して、フェルディナンド六世の名で即時停戦と武装解除を要求するつもりらしい』


『って事は…
つまり……
……何だ』

『和平派を支援すれば、カレナとの戦争は終結に向かう可能性が大きい。
だから俺達が支援に出向いている。
そういう事です』

考えながら口を動かしていたフランクリンに、ヴォルフが凛とした声を付け足す。
大事な所を全部持って行かれたフランクリンの顔が見てみたいものだ

『なんだか今回はマジで重大な任務だな…』

タキガワ大尉もしばし唸る。
それが普通だ。
相変わらずの空中ブリーフィング。
なぜ俺達には、いつもブリーフィングをする時間さえ無いのだろう。
それに慣れてしまった自分に、何となくだが溜め息が出てしまう

『例のタイフーン部隊も未だ未着任。
しかも今回は敵地上空。
正直かなりキツい戦いになるとこでした。
ゲオルグ空軍基地の決断に感謝ですね』

ロウェインの声には、多少だが安堵感が聴いて取れる。
俺達8機と大公派の航空戦力だけでは、敵地上空でのVIP護衛には確かに心もとない。
敵は血眼になって我々を攻撃して来るだろう。
SAMと航空機による集中攻撃も考えられる。

その攻撃をグリーメイア軍の勢力圏内まで凌がなければならないのだ。
最悪、またシュレスヴィヒ級を投入して来る事も予想される。
数は多ければ多い程良いに決まってる

「アーマナイト・ワンより各機へ。
我々は彼らに合流すれば、こちらの航空戦力は四十機を超す大規模なものとなる。
追撃する航空部隊からの攻撃を凌ぎ、何としてもカレナ大公と和平派を乗せた旅客機を守り抜く。
戦闘中に於いても旅客機の位置と、敵航空機の位置を常に確認。
旅客機に接近させるな。
我々は間も無くカレナ西部地域に入る。
敵地上空での戦闘だ。
各員の健闘に期待する」

8機は機体同士の間隔を開け、綺麗な編隊を左右に広げる

『ボストーク・ワンよりボストーク各機。
カレナの中にも、この戦争を終わらせようと動いた人間達が居る。
その彼らを決して死なせるな。
必ず守り抜くぞ』

8機は行く。
胸に幾多の思いを抱き、青空が広がる広大な西カレナの空を。
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