ACE COMBAT     〜DOG OF WAR〜

□静寂と平穏の中で
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2005年

7月3日

23:00


ゲオルグ空軍基地

着陸して来たミラージュ2000Dがエプロンに到着し、俺は整備兵達の後を追って機体に向かう。
照明に照らし出されたミラージュ2000Dにタラップが着けられ、ゆっくりとキャノピーが開いて行く

「エンジンの吹き上がりは問題ありませんでしたか?」

「たまに咳き込む程度。
問題にはならないレベルだ」

ヘルメットを脱いだフランクリンと整備兵が会話するなか、後席から例の新米パイロットが姿を現した。
幾分やつれてる気がする。
大丈夫だろうか…
なんか心配だ…

ミラージュから降り立った二人の姿を見ながら、俺は配属されて来た新米パイロットが気になって仕方なかった

「ハル。
中佐からの差し入れだ」

フランクリンから手渡されたアタッシュケース。
そのケースを受け取ると、ずっしりと妙な重みが体を駆け抜ける。
これは…

ビックリする俺の顔を見ながら笑うフランクリン。
これは絶対に危ない差し入れだ


「こ…これ……
何が入ってるんだ…?」

「開けてビックリ玉手箱ってな。
開けてみりゃ分かるさ。
それより」

フランクリンが新米の腕をグイッと引き、俺の前に例の新米を引きずり出した。
歳は見たところ十代後半。
浅黒い肌に銀色の髪。
眼は緑に近い青。
背の長けは170と行った所だろう

「スタンリー・オズボーン少尉。
TACネームはハウンドです。
アーマナイト隊四番機として着任致します」

スタンリーが俺に敬礼し、俺もスタンリーに敬礼で答える。
だが何か引っ掛かる。
聞き覚えのある声だ

「スタンリー。
君はアカデミーの出か?」

パイロットアカデミーの出身なら、何処かどうかで逢ってる筈だ。
廊下やカフェテリア。
先輩後輩の交流会。
逢っていそうな場面なら幾らでもある

「自分はグリーメイア空軍士官学校第八期です。
前任のブリュワーズ中尉の一期後輩であります」

パイロットアカデミー出身では無いらしい。
空軍士官学校第八期と言う事は、開戦後の士官不足で繰り上げ卒業させられた新米中の新米か


「実戦経験は?」

「はっ。
初陣はフランゲルド制空戦であります。
あの時は、命からがらベイルアウトして助かりましたが、同期の三人はベイルアウト出来ずに戦死しました…」

スタンリーの話で、なんとなく引っ掛かりが解けて来た。
俺達がマドラステアに移動すると共に、空軍士官学校の機能はアルヴァ空軍基地に移管された。
確か第八期生も一緒にアルヴァに移った筈だ

「もしかして…
お前フランゲルドでFー16Cに乗ってなかったか?」

アルヴァからフランゲルド上空に派遣された新米四人のうち、一人しかベイルアウト出来なかった飛行隊。
俺の目の前で全滅した新米達の飛行隊だ

「はっ。
ハウンド・フォーとして、Fー16Cで貴方達を援護しました。
思い出して頂けましたか?」


引っ掛かりが完全に解け、俺はハッキリと思い出した。
TACネームのハウンドと、何処かで聞いた事のある声。
どおりで…

「思い出したよ。
しかし…
良くフランゲルドから生還出来たな。
マドラステアのパイロットでも、未帰還が多かったってのに…」

「昔から悪運だけは良いんですよ。
ベイルアウトして降りた場所が、たまたま撃墜されたパイロット達の溜まり場だったんで、そのパイロット達と一緒にフランゲルドから何とか脱出出来たんです」

飄々と話すスタンリーだが、よく山あり谷ありのフランゲルドから脱出できたものだ。
空から見るフランゲルドは単に緑の海だが、フランゲルドはカレナの自然公園として保護されており、生い茂る森林の下は手付かずの大自然。
それも必ず年に数人は遭難者が出る程の大自然だ。
そこを抜け出すのは至難の業。
詳しく聞いてみたいが、もう時間が時間だ

「少佐。
貴方と共に戦える事を誇りに思います」

「俺も新しい部下が持てる事を嬉しく思う。
宜しく頼む」

差し出した手を握り返したスタンリーの顔は、やはり年相応の笑顔だった。
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