ACE COMBAT     〜DOG OF WAR〜

□絶望と希望
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ビュセックの森


ゆっくりと進む二台のハンヴィー。
屋根部分にあるシールド付き銃座には、M240とM2重機関銃が据え付けられ、それを構える兵士の目には緊張と揺るぎない自信が入り混じっている。

フリッツヘルムにゴーグル。

灰色を基調とした都市迷彩と、それを覆うチタン製防弾プレートの入ったアサルトベスト。
そして口元を覆うフェイスベールとインカム。
肩にストックを預け、即応態勢で周囲を警戒する。


ハンヴィーの車内でも、カービンタイプのXM8を構えた兵士達が別々の方角を見ながら、即応態勢で周囲を警戒していた

『周囲異常無し。
第一にだ…
残党なんて……』

射手の声が途切れる。
無線機の不調らしい。
そう疑った海兵の一人が、射手の足を引っ張って確認するも、射手は何の動きも示さない

「どうしたんだ?
おいマック?
マッ…!?」

ずり落ちて来た射手の定まらない虚ろな瞳と、ヘルメットに空いた穴。
血にまみれた顔と首がだらんと崩れ落ち、力無き腕を伝った血が後部座席を濡らしていく。
慌てて銃座に駆け上がった海兵を、今度は猛烈な縦揺れが襲い、海兵は車外に放り投げられた。


地面に叩き付けられた海兵は、そのままハンヴィーの下敷きになって押し潰される

「敵襲だ!
敵襲!!」

前を進んでいたハンヴィーが急停車し、海兵達が後続車の生存者救出と周辺の安全確保に飛び出す。
M240の射手も周辺を警戒し、インカムでシュレジャンとの通信を行う。

M240は7.62mm弾を使用する汎用機関銃。
いざとなればハンヴィーの銃座から取り外し可能で、柔軟な使用と高い信頼性が売りの優れた機関銃である

「二号車は全滅だ!
クソッ!!」

「即製爆弾か…!
警戒しろ!
まだ何処に潜んでるか分からんぞ!!」

分隊長の曹長が慌てる隊員達に指示を出すなか、銃座の海兵が頭を弾き飛ばされ車体に叩き付けられる

「スナイパーだ!
腕の良いスナイパーが居るぞ!
全員伏せろ!!」

的確に顔の真ん中に一発。
鼻とその周囲を吹き飛ばされた海兵は、力無く車体に身体を預けて腕をだらんと伸ばしてうなだれている

「発射音が無い…
サイレンサー付きか…!
クソッ!」

伏せていた海兵の一人が突然のけぞり、そのまま地面に崩れ落ちる。
眉間に一発。
M-21で反撃を行おうとしていたその海兵のヘルメットは、飛び出した肉片と共に遥か後ろに吹き飛ばされ、後頭部には握り拳大の孔が作り出されている。

海兵達は息を飲んだ。

相手は生半可な腕では無い。
そして位置を変えながら、着々とこちらに迫りつつある。
マズルフラッシュも発砲時に発せられる煙も無く、着々と海兵達を追い詰めつつあった

「隙だらけだな…」

スコープに海兵を捉え、再び引き金を引く。
スコープの中で首から血を吹き出して崩れ落ちる海兵

「あと二人……」

フランクリンはトランシーバーに向けて囁く

「全員行け。
撃たれるなよ…」

『了解だ』

短い返事と共に、真っ先に火を噴いたのは12ゲージショットシェルだった。
スコープの中で派手に吹っ飛ぶ海兵と、その攻撃に慌てて立ち上がる海兵。

すかさず一撃。

それは海兵の側頭部に命中し、海兵はガクンと崩れ落ちた

「ゲリラ戦には不慣れらしい…」

フランクリンはサイレンサー付きG3A4を構え、低姿勢のままでトランシーバーを口元に持って行く


「早いトコ分捕れるだけ分捕ってずらかるぞ。
機関銃は俺が外す。
早めに個人装備だけを分捕れるだけ分捕れ」

『了解だ。
大した腕だね全く。
見直したぜ』

木々の間を走りながら、フランクリンはオリーブドラブのシートを外した。
全身を覆うシートは、小枝やボロ布で覆われた即席のギリースーツになっていた

「射手に通報されました。
時間が無い。
急いで下さい大尉」

横転したハンヴィーや海兵達の死体が散乱する小道に出たフランクリンは、タキガワ大尉に催促しながらハンヴィーに取り付くと、奇跡的に無傷だったM2重機関銃の取り外しにかかる

「はいはい…
しかし海兵隊も割と簡単に始末出来るんだな」

タキガワ大尉達は死体からXM8とマガジン。
そしてハンドグレネードやグレネード弾を取り上げ、手当たり次第にポケットへ詰め込んで行く

「多分コイツらは新兵ですよ。
隙だらけでしたからね…」

取り外したM2重機をヴォルフに任せ、射手の死体が放置されたハンヴィーによじ登り、今度はM240の取り外しにかかるフランクリンの目には、安堵も不安も見られない。
自信と闘志に溢れる兵士の目だ。
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