ACE COMBAT     〜DOG OF WAR〜

□ケーニッヒ
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降り立ったセントラルバースは、グリーメイア軍の一大拠点に生まれ変わろうとしていた。

埠頭に設置された幾つものガントリークレーンが、オーシアのコンテナ貨物船からひっきりなしに陸揚げを行い、野戦飛行場のエプロンには60機近い戦闘機達が羽を休めている。
軍港ではヴェア・ヴォルフ戦闘群が出航準備にいそしみ、港はハシケやタグボートで溢れていた

「こらまた圧巻だ…
陸海空軍。
全部揃ってやがる…」

前線に向けて出発して行く輸送トラックの群れと、トラックに乗り込んで行く陸軍の将兵達。
ハンヴィーと輸送トラックの車列と、その先頭を進む装輪装甲車の群れ。
グリーメイア陸軍の第一軍と第二軍は、撤退を重ねるカレナ軍を猛追。
カレナ国境に迫る勢いで快進撃を続けていると、先週の広報にデカデカと乗っていたのを思い出した

「アルム平原のカレナ軍を駆逐出来れば、カレナ国境の向こう側まで一気に行けるらしいからな。
陸軍の連中も必死さ」

「いよいよ正念場ってヤツか。
忙しくなるな」


フランクリンと一緒に陸軍の車列をひとしきり眺め、とりあえず俺達はセントラルバースの基地司令部に向かう事にした。

道中で擦れ違うパイロット達は、どれも見慣れた顔ばかりだ。
やはり今回も、マドラステアから多数のパイロット達が参加しているらしい

「ようフランクリン。
ハルはモニクと宜しくやって来たのかぁ?」

「なかなか尻尾を掴めなくてよ。
残念だけど吉報は無ぇ」

また勝手な事を…
茶化すマドラステアのパイロット達と、フランクリンの会話は聞き流しながら、俺とモニクは黙々と歩き続ける。
ヴォルフも同年代の青年パイロットに捕まり、軽く雑談を交わしながら着いて来るが、やはりフランクリンは立ち止まって雑談中だ

「ヴォルフ。
フランクリンを連れてこい」

苦笑いを浮かべて頷いたヴォルフは、ヘルメットを抱え直しながらフランクリンを連れに走り出す

「ヴォルフも中尉の下で大変ね」

クスクスと笑うモニクは、ヘルメットを抱えてヴォルフを目で追っていた。
ヴォルフは弟の様な存在なのだろうか。
モニクの目には優しさがあった


「今日は長い1日になる。
フランクリンじゃないけど、俺達も地上に居る時位は力を抜いて行こう。
それに君と二人だけの時間は少ないんだ。
もう少し笑って?」

満面の笑みを浮かべて頷くモニクを見て、なんだか心が暖かくなる。
この戦争が終わったら、俺はモニクとずっと一緒に居たい…
最近、俺はそう思う様になった。
朧気に見えて来た戦争の出口は、俺を肇とするグリーメイア軍の兵士達にとって、まさに希望の光だった

『こらハル!
またモニクと好き勝手やってんのか!』

いきなり名前を呼ばれて、俺の心臓は飛び跳ねた。
声の方に目をやると、F-35Cの上に拡声器を持ったパイロットの姿があった。

取り巻きのパイロット達が腹を抱えて笑うなか、そのパイロットは拡声器を振り回し、ニヤリと笑った

「ビックリするじゃないですか少佐!
勘弁して下さい!」

俺の抗議に、パイロット達が更に笑い出した。

そんなグラオ隊の面々が集うベルテ少佐機の下に駆け寄り、機上のベルテ少佐に敬礼を送る

「新米共の様子はどうだった?」

「今期卒業予定の訓練生達は、少なくともフランクリンより期待できます」


俺の冗談半分な報告に、笑って手を叩くギュンター中尉。
なんでギュンター中尉は、いつもテンションが高いのだろうか。
前に思い切って聞いた事があったが、その時は元気が大事としか答えてくれなかった

「お前の御墨付きだ。
期待しておくぞ。
今から出頭か?」

ベルテ少佐の指差す先には基地司令部があった。
そういやこれからだ

「はい。
自分達は今着いたばかりですからね。
行ってきます」

「外見しか出来あがってないうえに、中はすげぇ事になってるから気をつけな。
俺は久しぶりに躓いちまったぜ」

そういって苦笑いするベルテ少佐。
やっぱり少佐は兄貴肌だと思う

「じゃあ気をつけて行ってきます」

少佐達に敬礼し、追い付いて来たフランクリンとヴォルフを引き連れて、俺達は基地司令部の中に入って行った。
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