ACE COMBAT     〜DOG OF WAR〜

□始まりの狼煙
5ページ/5ページ

シュレジャン基地内に降下したイベル人兵士達は、基地内に展開している鋼鉄の悪魔達と対峙していた。
砲塔が旋回を始め、耳をつんざく爆音と共に40mm機関砲が火を噴いた

『全車へ。
基地内のゴミを掃除する。
徹底的に浄化せよ』

ハンガーの影に身を隠したイベル人兵士を、そのハンガーもろとも吹き飛ばしたCV9040は、砲塔を旋回させながら黒煙を吐き出して加速をかけた。
40mm機関砲の掃射を繰り返す車輌の後ろでは、120mm滑腔砲を装備した軽戦車仕様車。
CV90120の主砲が火を噴く。
発射された多目的榴弾がイベル人兵士達を簡単に消し去ると、海兵隊員達がイベル人兵士達に向けて一気に突撃をかける

『まだだ。
まだ我々が負けた訳では無い。
全車』

唐突の大爆発がCV9040の砲塔を吹き飛ばし、加速をかけていた車体は緩やかに停車。
漏れ出したらしい燃料に引火し、周囲は炎と黒煙に覆われていく

「敵車輌撃破」

掩体の陰から発射された対戦車ミサイルは、CV9040の砲塔を完全に破壊した。
彼らが使った対戦車ミサイルは打ちっ放し能力を持った最新式。
発射後は速やかに退避・移動が行える優れものだ

「レオパルドが出て来る前に叩けるだけ叩く」

ミサイルを再装填し、軽戦車仕様のCV90120をロック。
そのままミサイルを発射し、再び掩体の陰に身を隠す。
歩兵戦闘車とは違う重い振動を感じ取りながらも、慌てずにミサイルを装填してから深呼吸。
意を決して掩体から飛び出すと、身を屈めて次の発射位置を目指して猛ダッシュをかける。

そばを掠めて行くライフル弾と、着弾の土煙の中を駆け抜け、彼は何とか発射位置に到着する

「次はレオパルドか…」

同軸機銃とキューポラの12.7mm機銃で味方を撃ち砕き、120mm滑腔砲で有無を言わさず消し炭へと変えて行く悪魔は、ターボチャージドディーゼルの唸り声を上げながら味方を蹂躙していた。

多目的榴弾の着弾が生み出す大爆発と、まるで人形の様に虚空へ舞い上がる兵士達

「すげぇな…」

荒ぶる悪魔の姿を見て、無意識に呟きが漏れた。
真っ黒に焦げた管制塔の下からレオパルドを狙いながら、その姿に改めて息を呑む

「もう少しだ…」

レティクルが徐々にレオパルド2A5に重なり始め、照準機の中で砲塔を旋回させながら周囲の味方を凪払う鋼鉄の獅子を捉えて行く。
対空火器を制圧して基地上空を旋回するグリペン達の轟音が、銃声と爆発音に彩られた死の協奏曲に彩りを添えるなか、遂にレティクルがレオパルドを完全に捉えた

「やり過ぎだ…!」

ミサイルを発射し、着弾も確認せずに移動を開始する。
誰だって死にたくは無い。
だが、彼は確認するべきだった。

彼に向けて撃ち出された多目的榴弾の存在を……






















同時刻

シュレジャン市
中央行政庁舎


カレナ陸軍の歩兵戦闘車と装輪装甲車が市庁舎を取り囲むなか、拘束された人々が庁舎から続々と連れ出されて来る

「司令官殿。
行政庁舎を押さえました。
速やかに司令部を設置します」

「前線は荒れている。
早急にな」

「Ja!!」

敬礼した兵士を見送り、司令官殿と呼ばれた将官は襟を正して行政庁舎を見上げた

「イベルア王朝の再興は目前だ…」

「閣下。
実行部隊より基地の六割を制圧したとの報が届きました」

副官から報告を受けたイベル人部隊の司令官。
アフラビー・ハシム将軍は深呼吸して気を静める

「バクラ少佐。
君は私の名前で連合軍司令部に積極攻勢を要請しろ。
火を消すのは早い方が良い」

「はっ」

副官の女性少佐は敬礼し、装輪装甲車に向けて走って行く

「今日も長い1日になりそうだ…」

行政庁舎に続々と運び込まれて行く機材を見詰めていたハシム司令は、よく晴れた夏の空を見上げながら呟いた。
空には幾筋もの白い航跡があった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ