ACE COMBAT 〜DOG OF WAR〜
□若者が見た空
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シュレジャン市庁舎
連合軍司令部
ビュセックの森から救出されたハル達は、連合軍が司令部を置いたシュレジャン市庁舎に出頭していた
「戦時国際法に抵触する事以外は何をやっても構わん。
向こうは国際法無視で攻めて来た。
しかし、こちらが破れば我々も大義や正義を失う事になる。
グリーメイアの第二軍が全力でカバーしてくれる。
先ずは敵主力を停戦ラインまで押し戻せれば良いんだ。
包囲されたグリーメイア第一軍と飛行場の救出は後になる。
一刻の猶予も無い。
攻撃も反撃も時間との戦いだ。
自惚れだが私の部下に弱卒は居ない。
前線に居るのは君達だ。
君達の判断で好きに暴れろ」
受話器を肩に挟んだ黒い眼帯が眩い少将閣下の姿を前に、ハルは緊張した面持ちで背筋を伸ばして固まっていた
「数日中にシュレジャンは息を吹き返す。
そうなれば兵站の心配は不要だ。
ゲオルグが支援要請に応えてくれた。
航空支援は充分ある。
だからシュレジャンの復活まで暴れ回ってくれ。
頼りにしているぞ中佐」
同様にハルの隣で固まっている中佐の姿があった。
我らがリーダー。
ヘルムート・ベルテ中佐だ。
マドラステア襲撃後にヘリでシュレジャン入りしたベルテ中佐は、そのままシュレジャン市庁舎へ出頭させられ、今現在の状況になっている。
要はハル達が心配でシュレジャンに来たら巻き込まれた口だ
「待たせたな二人共。
私が此処を仕切っているアフラビー・ハシム少将だ。
つい先刻だが、我々イベル人部隊も正式に連合軍の一員となった。
今後は色々と世話になる。
宜しくな」
差し出されたゴツゴツした大きな手を握り返し、二人は改めて少将閣下に対して敬礼する。
少将閣下は葉巻をくわえながら書類にサインすると、赤いベレー帽を脱いで深い溜め息を吐きながら椅子に座り直した
「まず始めに、ゲルニッツ少佐達はゲオルグのグリペンで戦闘を継続して貰う。
地下ハンガーに秘匿されていた予備機と、空爆を免れて無傷の機体がある。
ヘリを用意した。
ゲオルグ移動後、すぐさま反撃に移ってくれ」
ハシム少将は先程サインした書類を二人に差し出すと、くわえていた葉巻に火をつける
「マドラステアは滑走路の復旧が完了次第、前線の火消しを開始。
アルヴァからはセントラルバースに対する航空支援部隊を出します」
ベルテ中佐がFAXの束をハシム少将に手渡しながら、マドラステアとアルヴァの行動計画を説明しているなか、俺は二人に敬礼して部屋を後にした。
部屋を出た俺は、その足で皆の待つホールに向かった。
擦れ違う人は、その殆どが連合軍の兵士達であり、つい数時間前まで役人達が此処を闊歩していたのが嘘の様だ。
受付にも軍人。
庁舎前にはM2重機がマウントされたハンヴィーが鎮座し、その周囲も兵士達によって囲まれていた
「皆聞いてくれ。
俺達の行き先が決まった」
タキガワ大尉達が屯しているテーブルの真ん中に、ハシム少将のサインが入った命令書を置き、手を叩いて全員の注目を煽る
「俺達はゲオルグに移動後、カレナ空軍のグリペンで戦闘を継続する。
機種転換訓練も慣熟訓練も無いぶっつけ本番だが、何とかしてカレナ軍を停戦ラインまで押し戻さなければならない」
俺の言葉に、真っ先にタキガワ大尉が手を上げて発言を求めた。
俺はタキガワ大尉に発言する許可を与え、改めて命令書に目を通した
「追加分のタイフーンは受領出来ないんで?」
「詳細はゲオルグ移動後だろう。
何でも時間との戦いらしいからな。
詳しい事は俺も聞いていない。
言える事は、俺達はグリペンで戦う。
それだけだ大尉」
タキガワ大尉は短く了解の意を示すと着席し、苦笑いでロウェインの肩を叩いた。
行き先不透明では仕方ないだろう。
何せ俺も苦笑いが隠せているか不安な位なのだ。
唯一使える基地はゲオルグのみらしい。
コレではロクな反撃は無理だろう。
グリペンだけでは時間稼ぎが関の山だ。
それは俺だけで無く、此処に居る全員がそう思っていた。