ACE COMBAT     〜DOG OF WAR〜

□若者が見た空
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「血液型だけじゃあ無い。
患っていたアトピー性皮膚炎も無くなっている。
俺もミッチャー大佐もハイマン大佐も、あの師団長殿は偽物の別人だという結論に達した。
俺達だけじゃ無い。
第三航空師団内でも、中将の命令や行動に疑問を呈している者や、その正体に気付き始めたグループが居る。
そこでだ……」

ベルテ中佐はサイドバッグからタバコの箱を取り出し、それを俺に手渡した

「よく読んでおいてくれ。
俺達は、もっと詳しく調べて裏を取る。
だが、お前にもゲオルグで動いて貰う予定だ。
頼りにしているぞハル」

「はい。
モニクの事を頼みます」

俺は渡されたタバコを胸ポケットに仕舞い込むと、中佐の目を見ながらテーブルから立ち上がった

「ベルカから妻と子が来てくれた。
妻子の前で失敗は出来ないからな…
モニクの世話は、モニクの姉と俺の妻に任せてある。
心配するな」

「お願いします。
では自分はコレで」

そういって笑うベルテ中佐に敬礼し、俺はローターの爆音が轟き始めた方へ脚を進めた。
この戦争にケリをつける為に。













14:55

シュレジャン市庁舎の裏手に位置するヘリポートでは、二機のベル412EPがローターの爆音を轟かせていた。
カレナ軍の中尉が俺に敬礼し、ローターからの猛烈な風に逆らいながら走って来る

「もう皆さん搭乗済みです!
少佐も乗って下さい!」

「遅れてすまない!
早いとこ出発しよう!」

ローターの爆音に掻き消されまいと、叫び声で会話をしながら、俺はカレナ兵についてヘリに乗り込んだ。
俺がヘリに乗り込むとドアが閉められ、ヘリは更にローターの回転速度を上げて行く

「貴方達の警護と世話を仰せつかりました。
カレナ国防軍中尉のペンヴィルです」

「西カレナの…
ゲオルグでは世話になる。
宜しくな中尉」

ヘリの中には、既に乗り込んでいたフランクリンとスタンの姿もあった

「フランクリン。
命令書は読んだな?」

「あぁ…
お前と中佐が話している間、皆で一通り回し読みした。
ヴォルフはシュレジャンの総合病院で留守番って事も分かった。
これからアイツはどうなる?」

黙り込んだ俺の変わりにヘリのエンジン音が機内に響き続けるなか、フランクリンが溜め息を吐いた


「もうヴォルフは脚で立って歩けない事だけは確かだ…
戦傷章を貰って退役。
金は貰えるのか?」

「そこは心配無いと思う。
ヴォルフは戦闘中に重傷を負い、それが元で退役するんだ。
戦傷章と傷痍軍人の恩給以外にも、黄金獅子十字章や金星章も貰えるかもな。
これまでの戦功も加味した勲章が授与される様に、ベルテ中佐にもミッチャー大佐にも働きかけるつもりだ」

ヴォルフは運が良い。
両脚と両目は失ったが、幸いな事に適切な応急処置のお陰で命に別状は無い。
もっとも今後の生活能力や後遺症は別にしてだが……

「そうか…
是非そうしてくれ。
20歳前に身障者。
しかも飛びきり重い。
これからの事を考えたら、それでも割にあわないんだ。
出来る限りの事を頼む」

安心した様子のフランクリンを見て、俺は胸ポケットからタバコの箱を取り出し、その中身を確かめた。
強引に押し込まれた複数の色画用紙。
厚めの色画用紙は幾重にも折り畳められ、その隙間を縫う様に筒状の紙が複数詰め込まれている。
隙間を埋めていた筒状の紙を破れない様にユックリと取り出して広げ、色画用紙を取り出せる様に隙間を広げた



マドラステアの復旧作業完了は三日後
目標の拘束と指揮権剥奪は戦闘終息後を予定
戦闘終息後は速やかにセントラルバースに向かえ


なんとも過激なタバコだ……
筒状の紙には、師団長の拘束と指揮権剥奪を示唆した内容と、マドラステアの復旧が三日後には終わる事が記されていた

「なんともまた……」

厄介な事になって来た…
筒状に丸められた紙を開くと、そこには殴り書き走り書きの、ギリギリ読めるか否かの文字がズラリと並んでいた。
どうせコレも内容は行動計画だ……

「次から次に……」

俺が紙を広げる度に、不思議そうな眼差しで俺を見ていたフランクリンに気付いたのは、もう眼下にゲオルグ基地が見えて来た頃だった。
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