ACE COMBAT     〜DOG OF WAR〜

□旅立ちの空
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涙を浮かべながら震える俺に、シュライヒャー大尉は優しく微笑んだ

「あと一時間後には出発だ。
オルドリンに挨拶しておけ。
お前の中尉昇進を推薦してくれたのもオルドリンだ。
ゆっくり話して来い」

涙を拭いながら笑みを浮かべようとしたが、顔が引きつって変な笑顔しか出ない俺。
そんな俺に見かねたのか、シュライヒャー大尉は口を開いた

「お前の荷物はフランクリンに整理させておく。
早く行って来い。
それとも俺の手伝いをするか?」

冗談混じりで話す大尉に、俺は思わず顔が綻んだ。
自然な笑みを浮かべ、俺は改めて大尉に敬礼を送る

「行って来ます」

俺の言葉に、返礼しながら頷く大尉。
そんな大尉の表情を焼き付け、俺は中隊長室を後にする。
熱い想いを与えてくれた恩人のもとへ行く為に………。


















アルヴァ空軍基地
三番ハンガー


そこには、傷ついた愛機を優しく撫でるオルドリン中尉の姿があった。
機関砲の砲口を見据えながら、共に空を駆けた愛機を眺めるオルドリン中尉。
彼はまだパイロットスーツを脱いでは居なかった

「中尉…
オルドリン中尉」

俺の言葉に、中尉は静かに振り返った。
何かをやり終えたかの様な満足気な表情を浮かべながら

「ハルか。
大尉からの辞令は受けてくれたな?」

そんなオルドリン中尉から敬礼を贈られ、俺は中尉に最敬礼を贈る

「今まで有難うございました中尉!
空に対する中尉の想い…
俺が繋いで見せます!」

俺の言葉を聞いたオルドリン中尉は、どこか照れくさそうだった。
そして愛機を見上げながら、中尉は言葉を紡ぎ出す

「俺は空が好きだ。
戦闘機乗りになったのも、単純に空を飛びたかったからだった…
だが…
もう俺が空を飛ぶ事は無いかもしれない」

愛機を見上げる中尉の姿を目に焼き付けながら、俺は静かに歩き始める。
中尉のもとに

「だが俺の経験が役に立つなら、俺の想いが受け継がれていくなら、俺は教官として空に関わって行きたいと思う…
ハル。
お前が受け継いでくれるなら、俺はアルヴァの空を駆ける雛鳥達を育てて行く。
フランクリンを頼むぞ?」

中尉の言葉に、俺は小さく頷いた。
それを見た中尉の表情が、朗らかな笑みへと変わっていく

「マドラステアに行ったら、もっとシュライヒャー大尉を頼れ。
そして彼から沢山の事を学べ。
お前はもっともっと早く飛べる筈だ。
誰よりも早く、そして優雅に羽ばたける素質を持っている。
俺はリタイアせざるを得なくなったが、お前には沢山の時間と、頼れる仲間達が居る。
コレは素晴らしい事なんだぞ?」

中尉は俺の肩を軽く叩き、ハンガーから見える空を指差した

「空には夢がある。
希望がある。
そして…
戦争がある……
だがなハル。
お前は駆け抜けろ。
お前の仲間…
フランクリン達は後から必ず続いてくれる筈だ。
お前に流れるゲルニッツの血は、気高く光り輝く星になる」

熱い想いを語るオルドリン中尉。
俺は、オルドリン中尉の情熱に圧倒された。
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