イナズマイレブン

□真ん中目指して
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 はーっ、と糸を引くような長い吐息が断続的に空間に満ちる。
 帝国のレギュラー用ロッカールームは、広い代わりに少し肌寒い。
 けれども中央のベンチを占領して横になった佐久間の額からはまた汗が流れた。

 エイリア学園や真・帝国のいざこざが終わって、一月程。
 佐久間は漸くまたサッカーが出来るようになって、けれどもまだシュート技は禁止されているから、フィールドの外をひたすらに走ったりドリブルしたりして時間を過ごしていた。
 練習時間が終わった後も、あとちょっとだけと繰り返し、身体を動かせるのが楽しいのだろうなと思うと中々止められなくて、とうに日が暮れた頃、膝を折った彼はやべ、立てないと笑った。
 最後まで付き合っていた辺見も先程着替え終えて寮へ帰り、残ったのは俺と佐久間だけだった。
 そろそろ鍵を閉めて帰らなければいけない。けれど、少しずつ穏やかになっていく佐久間の吐息だけが聞こえる何とも言えない空間が気に入って、俺も無言で居た。

 佐久間がこうして黙っているのは酷く珍しい事だった。
 俺はどちらかと言えば口数が少ない方だが、佐久間はそんな俺が相手でも淀みなく良く喋った。そして源田は面白くないとかそういう評価を良く下される。
 一番喋るのは、佐久間は結構無茶しいだから、その辺を咎めて言い争いになる時くらいだ。偽善者やら優等生やらと詰られる事も多い。成績だけなら佐久間の方が優秀なのだけど。
 意地っ張りな彼は俺が言い咎めた事で益々ムキになる事も多くて、小意地になった佐久間を諌められるのは鬼道だけだ。
 今日だって、久しぶりの練習が楽しくて、でもそれ以上に焦っていた佐久間を、彼ならきっと上手い事宥められたのだろう。『石』が無いなら、練習しかないだろうと思い詰めたように呟いた彼を。
 でも鬼道は、ここには帰って来ない。
 ちゃんと脚が治ったら佐久間がキャプテンになったりするんだろうか。ぼんやりと思う。

「なぁ、佐久間」
「・・・んだよ」
「シュートだけがサッカーじゃないと思うぞ」
「知ってるよ」
 そりゃそうだ。佐久間が敬愛する彼はフォワードではない。
「だから、そんなに焦らずに」
 鬼道の隣に、佐久間が立って戦えたら、それも凄く素晴らしい事だと思う。
「うっせぇ。お前も、一月くらい腕駄目になんなきゃ分かんねぇよ」
「・・・」
 そうなのだろうか。だったら、そうなれば良かったのに。
 出来たら引き換えに、佐久間の脚が治れば良いのに。
「・・・おい」
 何か妙な事考えてるだろ。
 振り向いた佐久間の眉間に皺が寄った。
 妙な事、だろうか。
 黙り込むと、佐久間ははあ、と大きく息を吐いて、
「そうだな。あの人の前に立って戦うの、楽しかったけど、」
 独白じみた声が落ちる。
「まだ源田が後ろに居てくれるから、良いか」
 目を細めた佐久間を抱き締めた。

「そのまま寮まで連れて帰ってくれよ」
「・・・ああ。でも」
 もう少しだけ、このままで。


 暫くシュート練習出来なかったから佐久間はFW→MFなんじゃないかなとか。

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