ジャンプ系

□ドロップエピローグ
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 カードを構える武藤遊戯の横顔は酷く精悍だ。
 時間も空間も超えた場所から彼を眺めながら見惚れるように目を細めた。

 俺と相棒が別れてから。
 俺が、彼の身体を返してから、暫し。
 俺と彼を区別していた人達から、相棒は俺に似て来た、とよく評されるようになった。
 そんな彼を強いと、格好良いと称える声に誇らしくすら思う反面、俺を傍らに置いてくれていた頃の、穏やかで静かな彼こそが、強くて格好良かったと、俺は思っている。
 幾ら思っても、誰にそれを伝える事も出来ないけれど。

 俺は、未来へ進んでいく相棒を、遠く見送る事しかできない。

 そして、また暫し。
 相棒が俺と過ごした高校を巣立つ日が迫った頃、海馬が、藍神と名乗る男が、また相棒を『器』呼ばわりしながら、パズルのように噛み合い、新たな運命が動く。
 相棒が海馬に向けてカードを構える姿に、不思議な感慨を覚えた。

 セトを初めて見た時。否、二度目に見た時、海馬に似ている、と否応なく思った。
 けれど、今になって考えると、彼等は笑ってしまうくらいに似ていない。
 その容姿や声、ブルーアイズへの執着まで本当にそっくりだけれど、セトは向こう見ずで横暴ながら、俺に仕え、俺の為に生きる事を是としていた。
 海馬もある意味で俺の為に尽力しているが、それは彼自身の欲求を満たす為に他ならない。
 決着を付けたいと。カードを交えたいと。呪いなぞ恐れる事も無く王の墓を暴こうとしている。俺はもう居ないのだと、ここに居るのは武藤遊戯なのだと、必死に諭す相棒の声を一蹴し、その姿形の向こうに未だ俺だけを透かし見ている。

 そうかそうか。そんなに俺に会いたいか。
 かつて確かに対等だったライバルは、ここからではまるで幼い子供のようにさえ見える。
 俺を求めて伸ばす手を、今なら掴んでやる事も出来そうだ。
 なあ。でもさ、

 俺だけがこんなに寂しいなんて、不公平じゃないか。
 俺は、相棒にもう要らないって言われたのに、お前ばっかり相棒に呼んで貰えるなんてずるいじゃないか。
 求められたからって、相棒に応えてもやらないお前に会ってやるなんて、癪じゃないか。

 だから、お前にだけは会ってやらない。
 そのままそこで立ち止まっているといい。
 世界最先端の技術を扱いながら、未来へ期待されながら、過去だけに執着して、一歩も動けないで、相棒や弟に取り残されて、それでも俺との距離が縮まる事は有り得ないままで。
 お前は精々、俺に焦がれ続ければ良い。


 この3人本当に三角関係だなぁって改めてしみじみしてしまった。
 表ちゃんや城之内君には姿見せといて、海馬さんが居る間は頑なに出て来なかった王様に笑った。

Title by melancholic

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