イナズマイレブン

□会うは別れの始め
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「レーゼ」
「!」
 夜闇の中を歩いていた。夏の空気は夜でも生温い。
 キャラバンが見えなくなった頃に、背後から声を掛けられて酷く驚いた。
「円堂・・・」
 深い夜空を背に笑いかけてきたのは、雷門イレブンを率いるキャプテンだった。
「どうした、眠れないか?」
「ああ、少し・・・」
 連日、エイリア学園との試合に備えて特訓特訓で、強いストレスと疲労から基本的には皆横になるなり気絶するように寝入ってしまうが、円堂には周期的に眠れない、というより、睡眠が殆ど必要ないような時があった。
 それでも身体を休める為に横になっていた円堂が、キャラバンを下りた誰かが数分待っても戻らない事を訝って後を追うと、1人立ち尽くしていたのは今は仲間になったジェミニストームのキャプテンだった。

「悪夢を見る」
 ぽつとレーゼが呟き、円堂はそうか、と短く返した。
「ジェネシスと戦うのが怖い?」
「・・・分からない。ただ、恐ろしいのだ」
 漠然と、終わりが迫っているような、予感。
 福岡で、最初にジェネシスと対峙して以降益々強くなった、今のままでは居られないのだという、焦燥。疎外。

 孤独。

「我の役割は、全うする」
 言ったレーゼの言葉に、円堂は苦笑して一瞬黙り、
「・・・前の仲間と戦うの、辛いか?」
 問われたレーゼは暫く考えた後、首を横に振った。
「強大な相手だから、恐ろしい、とは思う。・・・しかし、我は彼らと共に在った事を覚えていないから、仲間、と言われても、ピンと来ない」
 レーゼの記憶は、京都で落ち葉の中に座り込んでいたあれからだ。文字通り右も左も分からずに立ち往生していた所を円堂達に発見されて逃げるように促され、サッカーボールひとつを託されていつかの共闘を約束し、再会して仲間になった。
 円堂達が教えてくれた、エイリア学園として彼等と敵対し、デザームやグランと共に居たらしい記憶は全く無い。
 何故、この地球を侵略しよう等と、思ったのだろう。
 レーゼの仲間は、少し前から、そして最初から円堂達だ。

 けれど、きっとこの時は永遠ではない。

「怖い。寂しい」
 レーゼは独白じみて呟き、円堂から視線を外して、高い空へ目を向ける。
「帰りたい?」
「え?」
「あのどれかが、お前の家なのかな」
 どこか楽しそうに円堂が言って、レーゼも再び瞬く星々へ目を戻した。
 高く、遠く、美しく、よそよそしい冷ややかな夜空。

 あれが、我の帰る場所?

「俺、お前達の事全然知らないけど、いつか帰れたら良いな」
 円堂は笑うが、聞いたレーゼは何かを言おうと口を開きかけて、
「もうキャラバンに戻ろうぜ」
 言った円堂に無言で頷き、踵を返した。
 自分の事なぞ、レーゼ自身にも何一つ分からない。
 エイリア星等と、宇宙等と言われても、何も覚えていない。全く実感が沸かない。

 ひとつ確かなのは、ひたすらに色濃い別れの予感で。

 ふと夢の光景を思い出した。
 背景は恐らく地球のどこか。狭い庭のような場所で、目の前に立っているのは背丈からして少年で、しかし何故か顔は見えない。
『お前は・・・』
 誰だ、と問う前に鮮やかな長髪を翻した少年が口を開いた。
『君こそ、一体誰だい?』
『我は、』
 気安い声に、レーゼだ、と名乗ろうとして出来なかった。その名前は酷く曖昧で、何の証明にもならないような気がした。
『もう良いよ』
 少年が手を伸ばす。酷く恐ろしいのにどうしても抗えなくて、触れられた先から身体は闇に溶け、そこでいつも目が覚めるのだ。

 寸前、見えた気がする少年の顔はどうしても思い出せない。

 眩暈がする。
 足場が、揺らぐ。
 夢の少年なんかより、不確かな気がする自身の存在。
 星空何かに、答があるとは思えなかった。

 我は、何を忘れているのだろう。


 俺ブン設定。
 円堂達はレーゼたんにお前はエイリア星の宇宙人で地球侵略に来たんだよって教えたんだろなーと思って。
 『緑川』と『レーゼ』の兼ね合いってどうなってんだろな。記憶喪失後は演技ではあるまい。

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