イナズマイレブン
□獅子の願事
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「よお、グラウンド空いてるか」
「ああ、何なら相手になろうか」
FFIのアジア予選決勝も迫った日、ここ数日ずっとそうであるように、佐久間は早朝からユニフォームを着て帝国グラウンドに姿を見せた。
「聞いたぞーネオジャパンの事」
「・・・そうか」
何本かシュートを打った後、そういえば、と言って佐久間は皮肉気に笑った。
瞳子監督と砂木沼に声をかけられ、イナズマジャパンへ挑む為のチームに入っていた事を。
「お前ら最近姿見えなかったのってその所為だったんだな」
お前といい成神といい寺門といい、そんな暇あったら俺の練習相手してろ、言って佐久間は足元のボールを蹴り出す。反射的に片手で弾いた。気に入らなかったらしく片眉が上がる。
「鬼道さん達に挑もう何て身の程知らずなんだよ!」
びし、と人差し指を突きつけられて怒鳴られる。確かに俺がやったのはそういう事だ。
「ああ、悪かった。・・・でもな、砂木沼には悪いけど、俺、正直、勝てるとはあんまり思ってなかった」
「は?」
砂木沼の熱意に押されてネオジャパンに入り、成神達や、他のチームだった奴等と体力作りをして、技を磨き、戦略を練るのは楽しかった。
選考会に呼ばれる事すらなかった世界戦候補の雰囲気を擬似的に感じて刺激にもなった。
ただ、最終的にイナズマジャパンを押し退け俺達が本当に日本代表になれるイメージはあまり無かった。
「勝っても、本当に代表入り出来るとは思えなかったし」
向こうの監督は思いの他あっさりとメンバー総入れ替えを飲んだが、俺達が勝っていたとして、本当にそれがそのまま実行されていたのだろうか。
背負った日の丸を、そんなに軽く扱うべきではないと思う。挑んだ側の俺が言うのも何だけど。
「じゃあ何がしたかったんだよお前」
半ば呆れたように佐久間が問う。
最たる理由は砂木沼の懇願を受けた事だ。俺にはそれを断る強い理由は無かったし、かつては日本一何て言われてた俺が、またこうやって求められたのが嬉しかったのもある。
ただ、それ以上に、
「・・・もしかしたら、試合経過によって1人くらいは、入れ替えあるかもって」
チーム丸ごと入れ替えるのは現実的ではないが、突然挑んで来た俺達何かに苦戦するようなら、チーム編成を考え直す切っ掛けくらいにはなるかも知れないと。
「ふーん・・・。でも、あんまり嘗めんなよ。円堂は勿論だけど、ああ見えて立向居もすげぇぞ」
一応は同じイナズマジャパンのチームメイトに当たるからか、珍しく佐久間が他人を褒めた。上手くやれているようで少し嬉しい。
けれど、彼は勘違いをしている。
「違う。お前が、入れたら良いなって」
俺がゴールを守りきって、もっと別のシューターや戦術が必要だって事になれば、もしかして佐久間がイナズマジャパンに呼ばれるかも知れないと。
それをそのまま言うと、佐久間は顔を顰めばぁかと言って俺の頭をはたいた。
「俺は自力でその内選ばれてやるから良いんだよ。お前は来年のフットボールフロンティアまでに自分の技磨いとけ!」
言って佐久間は立ち上がると、ペナルティエリアから出て行った。取り敢えず練習を続けるという事で利害は一致したらしい。
+
源田はこう、最初に選ばれなかった段階でもう『日本代表入りしたい』みたいな向上心は無いと思うのですよね。
書き出しがいつかのヘラアフと似ているのは仕様です。別に関連がある訳ではないですが。