イナズマイレブン

□じらしすぎは禁物
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「うあー、つっかれたー!」
 大きく響いたホイッスルを合図に、それぞれ座り込んだり、倒れ込んだり。

「ふふ、皆お疲れ様」
「全く、限度ってものを知らないんだから」
「でも、とってもいい試合だったと思います」
 先輩達の言葉を聞きながら、私もグラウンドから目を離せない。

「あーあーズボンはクリーニングだな」
「ユニフォームでもねぇのにスライディングなんかするからだろ」
 帝国の人達も笑いながら愚痴を零す。何度もメンバーを変えては試合をして、合間に1対1でドリブルを競ったり、シュートを競ったり。
 特に3年生の人達はあんまり楽しそうで、誰も終わりを告げられないで居る内に、空はすっかり朱焼けている。
 未だにまともな照明設備のない雷門中なので、これ以上の続行は不可能だ。言わなくても皆分かって、試合の興奮の残滓が残ったフィールドは、それでもどこか静かで寂しげだ。

「ドリンク足りるかな」
 見慣れたドリンクボトルと、ペットボトルのスポーツ飲料を運んで苦笑した木野先輩に、私が配りますと駆け寄る。
「別に大丈夫だよ?」
「でも、私、マネージャーですから!」
 言えば、じゃあ雷門の皆の分お願いね、とドリンクボトルを渡されて、木野先輩達は帝国や他校の皆の方へ駆けて行った。

「キャプテン、お疲れ様です!」
 お礼を口にしてボトルを受け取ったキャプテンは、お前もか、と言って少し困ったような顔をした。
「え? え? 何がですか?」
「ほら、もう俺は『キャプテン』じゃないだろ」
 栗松君を指しながら言われて、そういえばそうだと思い至る。
「今朝さ、虎丸にも同じ事言ったんだけど、あいつやっぱり俺がキャプテンだーとか言っててさ」
「ああ・・・」
 虎丸君は人の好き嫌いが激しいから、ある程度無理からぬような気もする。私も今釘を刺されなければ同じような事を言ったかも知れない。
 それは栗松君がどうとかではなく、彼が、余りにも、
「だから、新キャプテンもだけど、虎丸がちゃんと新キャプテンのサポートするようにお前が見張っててやれな」
「はい! 引き続きマネージャー頑張りますよ!!」
「・・・」
 拳を振り上げた私を、彼は静かに見下ろした。いつの間に、こんなにはっきりと身長差が付いたのだろうと思う。
「何、ですか?」
 ああいや、と、一人で頷いて、彼は目を細めた。
「虎丸や栗松もだけど、お前も居るから、安心して卒業出来る」
 サッカー部を、宜しくな。静かに託されて。

 彼は今日を境に雷門中の生徒ではなくなる。
 雷門サッカー部は、部を再生させたキャプテンの手を離れ、私達が、受け継ぎ、支え、作っていくのだ。





 それから他校の人達を見送って、旧部室を掃除して、グラウンドを整備して。
 もう、空気はすっかり藍だ。

「円堂君、そろそろ帰りましょう」
 夏未さんに名前を呼ばれて、背を向ける。
 視線の先には、共にマネージャーとして彼らを支えた先輩達。

「さようなら!」
「またね、春奈さん」
「さよなら、音無さん」
「じゃあね、春奈ちゃん」
 それぞれに、別れを告げて。

「じゃあな、音無」
「はい」
 あっさりと、手を振って。

 彼が最後に誰へ辿り着くのかは、相変わらずはっきりしない。
 私は先輩方の事を三者三様に好きで応援しているから、私もはっきり誰が良いとは言えずにいる。

「あのっ」
「ん?」
「今まで、ありがとうございました。・・・円堂、さん」
「おう!」

 ひとつはっきりしているのは、それが私ではないという事だ。
 私は先輩達を押し退けられる程には、信愛家でもなければ自信家でもない。
 たった今まで、気付く事すら出来なかった私が悪いだけだ。この上ない自業自得だ。

 私も彼を好きだった何て、今更分かっても遅過ぎる。


 円リカまで書いた癖に今まで書かなかった円春。
 どうなんだろ彼女は『彼女だけ円堂に惚れない』事が魅力な気もする。

Title by メガロポリス

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